栗原悦蔵

栗原悦蔵：激動の時代を駆け抜けた海軍軍人

栗原悦蔵（くりはら えつぞう）は、1894年（明治27年）3月31日に群馬県前橋市で生まれ、1987年（昭和62年）9月18日に93歳で亡くなった、日本の海軍軍人です。最終階級は海軍少将。

海軍軍人としての経歴

旧制群馬県立前橋中学校を経て海軍兵学校に入校（44期）。卒業後は海軍将校として様々な役職を歴任しました。特に、海軍報道部第一課長時代には、「竹槍事件」と呼ばれる報道事件が発生。この事件では、毎日新聞記者であった新名丈夫を陸軍から守るために奔走しました。栗原は、新名をパラオに派遣することで陸軍の召集から逃れさせようとしました。この際、「海軍は君を陸軍に渡すことはできない。願わくは華々しく死んでほしい」と涙ながらに語ったと伝えられています。ただし、事件の元となった記事は栗原が書かせたという説もあります。

また、米内光政、井上成美、高木惣吉といった重鎮の下で、終戦工作にも携わりました。

栗原は軍令部第4課長として、運輸、補給、徴用船舶、出師準備、人員充実、国家総動員を担当していました。日米開戦に対しては、南方資源を内地に還送することは不可能であると主張し、反対の立場をとっていました。

戦後は公職追放となりますが、その後は小松製作所に入社し、小松フォークリフト会長に就任しました。

人物像

栗原は、地味ながらも非常に誠実な人柄で知られており、米内光政、井上成美、高木惣吉など、多くの有力者から信頼を寄せられていました。また、新聞記者からの評判も非常に良い人物でした。

エピソード

栗原は、海軍兵学校59期の学年指導官を務めていた際、卒業の餞として『訓示集』を作成し、生徒たちに贈りました。この『訓示集』は、伊藤整一中佐をはじめとする11名の生徒隊監事の協力を得て作成されたもので、400字詰原稿用紙94枚にも及ぶものでした。この中には、実務につく初級士官としての心構えが丁寧に記されていました。

年譜

1894年（明治27年）3月31日 - 群馬県前橋市に生まれる。
1913年（大正2年）9月3日 - 海軍兵学校に入校（入校時成績順位100名中第54位）。
1916年（大正5年）11月22日 - 海軍兵学校を卒業（卒業時成績順位95名中第63位）。海軍少尉候補生に任官し、装甲巡洋艦「八雲」に乗組。
1917年（大正6年）12月1日- 海軍少尉に任官
1918年（大正7年）11月9日 - 装甲巡洋艦「八雲」に乗組、少尉候補生指導官附となる。
1919年（大正8年）12月1日- 海軍中尉に任官
1923年（大正12年）12月1日- 海軍大尉に任官
1927年（昭和2年）12月1日 - 海軍大学校甲種第27期学生となる。
1929年（昭和4年）11月27日 - 海軍大学校甲種を卒業（卒業時成績順位20名中第18位）。
1929年（昭和4年）11月30日 - 海軍少佐に任官。
1935年（昭和10年）11月15日 - 海軍中佐に任官。
1939年（昭和14年）11月15日 - 海軍大佐に任官。
1945年（昭和20年）5月1日 - 海軍少将に任官。
1945年（昭和20年）11月30日 - 海軍省廃官により予備役編入、充員召集。
1946年（昭和21年）3月31日 - 充員召集解除。
1987年（昭和62年）9月18日 - 逝去（享年93）。

親族

* 兄：栗原祐治海軍大佐（海兵30期）




栗原悦蔵は、激動の時代を海軍軍人として生き抜き、その誠実な人柄と確かな行動力で、多くの人々に信頼された人物でした。

もう一度検索