栞

栞（しおり）とは

栞は、読書中に現在読んでいるページや、後で読み返したい箇所を示すために使用される道具です。一般的には、紙や布、樹脂などの薄い素材を加工したものが用いられ、本のページに挟んで使われます。付箋も同様の目的で使用されることがあります。また、本の背に取り付けられた紐も「しおり」と呼ばれることがあります（スピン、栞紐）。

栞の種類と形状

現代の一般的な栞は、長方形の硬い紙片で、上部に紐を通す穴が開けられているタイプが多く見られます。デザイン性の高いものは販売されており、出版社や書店が広告を入れて配布したり、手近な紙片で代用されたりすることも日常的です。また、押し花を用いた風情のある栞など、多様なバリエーションが存在します。さらに、リーフレットや、全集などの叢書に同梱される月報も「しおり」と呼ばれることがあります。

栞の歴史

西洋

栞は「本の誕生とともに生まれた」と言われるほど、長い歴史を持っています。古くは1世紀半ば、キリスト教の聖職者が聖書を読み進める際に、僧衣の一部を挟んで目印にしたのが始まりとされています。16世紀に活版印刷が普及すると、袋とじで販売された本を切り開くためのペーパーナイフが、栞の代用として使われるようになりました。その後、金属製のペーパーナイフが紙を傷めることから、19世紀にはシルクリボンが、さらにその後は紙製の栞が主流となりました。

日本

日本では、仏教の経典とともに象牙製の籤（せん）が伝わったのが、栞の原型とされています。奈良時代から平安時代には、竹製や木製の籤が使用されていました。平安時代の『枕草子』には、「けふさん」という栞の役割をする道具の記述があります。

江戸時代に書物が普及すると、紙縒りや草花が目印として使われるようになり、現代に近い栞としては、徳川光圀が絹で包んだ紙片を後水尾天皇に献上した記録があります。天皇はこれを喜び、西行の和歌を引き合いに「枝折（しおり）」と名付けました。この「枝折」という言葉は、木の枝を折って道標とする行為に由来し、転じて本の目印や初心者のための手引書を指すようになりました。「しおり」という言葉の語源は、撓めるという意味の「しほる」が変化したものです。平安時代末期には「ほ」がワ行音化し、「しをる」という表記が生まれ、意味から「枝折る」という漢字が当てられるようになったと考えられています。

明治25年（1892年）には、春陽堂[[書店]]が尾崎紅葉の著書に「美麗なる彩色刷りの栞」を付けたと記録されており、これが日本で最初の厚紙製栞とする説があります。紙製の栞が広く普及したのは大正時代以降で、昭和初期には円本ブームとともに広告付きの栞が大量に作られるようになり、収集や交換会も行われるようになりました。

80年代から90年代前期には、観光地で青山みるくや高徳瑞女といったイラストレーターによるファンシーなイラストやポエムが印刷された栞がお土産として販売され、人気を博しました。

栞という言葉の由来

栞という言葉は、もともと「夾算（きょうさん）」や「箋（せん）」といった道具に由来しています。

夾算（きょうさん）: 竹や木を薄く削り、一部を裂いて糸や紙縒りで縛ったもので、巻物や書物の紙ばさみとして使われました。
箋（せん）: 書籍の題名や年号などを記した札で、巻物の軸や帙（ちつ）に結びつけたり、本のページに挟んで使われました。

脚注

栞の語源は、木の枝を折って道標とした「枝折る（しおる）」に由来します。転じて、書籍の目印や案内を意味するようになりました。

関連項目

ブックマーク: 栞を意味する英語から転じたインターネット用語。
ドッグイア: ページの角を折って栞の代わりとする行為。
エフェメラ: 様々な使い捨ての紙で、栞の代用品となるもの。
* 山下メロ: 80年代のファンシー絵みやげとしての栞を紹介。

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