根津嘉一郎 (2代目)

2代目 根津嘉一郎：東武鉄道中興の祖

2代目根津嘉一郎（1913年9月29日 - 2002年2月15日）は、日本の実業家であり、根津財閥の二代目総帥として知られています。彼は東武鉄道の社長を長年務め、その経営手腕から「東武鉄道中興の祖」と称されました。また、日本陶磁協会の理事長も務め、文化面への貢献も大きく評価されています。

生涯

初代根津嘉一郎の長男として生まれた根津嘉一郎は、武蔵高等学校を経て東京帝国大学経済学部を卒業後、1936年に東武鉄道に入社しました。当初は父の秘書として勤務し、1940年に取締役に就任。同年、父の死去に伴い、2代目根津嘉一郎を襲名し、翌1941年には27歳という若さで東武鉄道の社長に就任しました。

1994年に内田隆滋に社長職を譲り会長に退くまで、53年近く社長を務めました。この在任期間は、東京証券取引所上場企業としては最長記録です。

根津は、父と同様に美術や茶道にも深い造詣を持ち、根津美術館の運営に尽力しました。美術館の開館や戦後の復興にも深く関わり、自ら理事長・館長として美術館の発展に貢献しました。また、学校法人根津育英会の理事長として、青少年への教育にも力を注ぎました。これらの功績が認められ、1972年には藍綬褒章を受章しています。1984年には、鉄道事業への貢献が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。

2002年2月15日、心不全のため88歳で死去。墓所は多磨霊園にあります。

東武鉄道への貢献

根津嘉一郎は、東武鉄道の発展に大きく貢献しました。戦後の復興期から、鉄道・バス輸送力の増強、流通・不動産・レジャー産業など関連事業への進出を推進しました。特に、昭和30年代からの輸送量増加に対応するため、関東の大手私鉄として初めて連続立体交差事業による複々線区間を開通させ、帝都高速度交通営団（現東京メトロ）日比谷線との相互直通運転を開始するなど、輸送力強化に尽力しました。

また、日光・鬼怒川方面の観光振興にも力を入れました。デラックス・ロマンスカー1720系を新造した際には「世界の日光線にふさわしい新車両を」という合言葉を作り、野岩鉄道会津鬼怒川線の開業、100系スペーシア新造、東武ワールドスクウェア開業など、日光・鬼怒川を観光地として発展させるための事業を推進しました。

人となり

根津嘉一郎は、物静かで温厚な紳士として知られていました。社員への思いやりを忘れず、「ケガに注意いたしましょう ご家族が無事の帰りをお待ちです」「お客様の身になって心になって」「親切な東武バスを実践しよう」といった標語を定めました。勲一等瑞宝章を受章した際には、「会社全体がいただいたもの」と語るなど、謙虚な人柄が窺えます。また、ワンマン経営者ではなく、社員を叱ることもなかったといわれています。

趣味は根津美術館での美術鑑賞や茶道であり、父親である初代根津嘉一郎の影響を強く受けていました。ゴルフも趣味の一つでした。宗教は浄土宗で、住所は東京目黒区上目黒、港区南青山にありました。

家族

父は「鉄道王」と呼ばれた初代根津嘉一郎。妻は安田善五郎の三女・智恵子。長男は東武百貨店名誉会長で根津美術館館長・理事長の公一、次男は東武鉄道社長の嘉澄。三女の恭子は旧皇族の竹田恒正の妻です。

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