根鰓亜目

根鰓亜目（クルマエビ亜目）: 多様なエビたちの世界

根鰓亜目、別名クルマエビ亜目は、十脚類を構成する主要な亜目のひとつです。抱卵亜目と比較して、より原始的な特徴を持つと考えられています。かつて十脚類は、形態に基づいて長尾亜目（エビ）、短尾亜目（カニ）、異尾亜目（ヤドカリなど）に分類されていましたが、根鰓亜目は従来の長尾亜目に含まれるエビ類のグループです。

根鰓亜目の特徴

根鰓亜目の最大の特徴は、成体の鰓が細かく枝分かれした羽毛状の構造をしている点です。この「根鰓」という形状が、亜目の名称の由来となっています。ただし、ユメエビ類のように、成体で鰓を持たない種も存在します。

体長は種によって大きく異なり、数mm程度の小さなユメエビ類から、30cmを超える大型のウシエビやオオミツトゲチヒロエビまで多様なサイズがあります。

生殖器の位置も重要な特徴です。オスは第5歩脚基部、メスは第3歩脚基部に生殖腺を持ちます。さらに、オスには第1腹肢内側に雄性生殖器（ペタスマ）、メスには第4・5歩脚内側に雌性生殖器（セリカム）があります。これらの生殖器の形態は、特に種数の多いクルマエビ科の同定において重要な手がかりとなります。

根鰓亜目の生活史

根鰓亜目のエビ類は、受精卵を保護することなく、水中に放出します。放出された卵はプランクトンとして海中を漂いながら発生します。卵を保護しない分、一度に産む卵の数が多い（小卵多産）傾向があり、一般的に抱卵亜目のエビ類よりも産卵数は多いです。大型種では、数十万個に達することもあります。

孵化直後の幼生はノープリウス幼生という形態です（抱卵亜目のエビ類はゾエア幼生、または直達発生で孵化）。その後、ノープリウス、プロトゾエア、ゾエア、ポストラーバ（マスティゴプス）の4段階の変態を経て、稚エビへと成長します。なお、クルマエビ科のゾエア期をミシス、サクラエビ科のプロトゾエア期をエラホカリス、ゾエア期をアカントソーマと呼ぶこともあります。

根鰓亜目の分類

根鰓亜目は、2上科9科に分類され、そのうち2科は化石種のみで構成されています。化石記録はジュラ紀まで遡り、熱帯から温帯、そして深海まで、幅広い地域に分布しています。大部分は海生ですが、汽水域や淡水域に進出している種もいます。

主要な科: サクラエビ上科には、サクラエビ科やユメエビ科が含まれます。サクラエビ類は群泳する習性があり、食用として漁獲される種もいます。ユメエビ類は小型で、鰓を持たない種もいます。クルマエビ上科には、漁業上重要なクルマエビ科、イシエビ科、クダヒゲエビ科、チヒロエビ科、オヨギチヒロエビ科が含まれます。これらの科には、クルマエビ、ウシエビ、イシエビなど、私たちにとって馴染み深いエビ類が多く含まれています。また、絶滅した古生物の化石も知られています。

根鰓亜目の系統

現生種の系統関係については、分子系統解析などによって研究が進められていますが、ユメエビ科の系統的位置については、依然として不確定な部分が残されています。

まとめ

根鰓亜目は、多様な形態、生活史、そして広範な分布を示す、魅力的なエビ類のグループです。本稿では、その特徴、生活環、分類、系統について概説しました。今後の研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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