格下げ車両

格下げ車両とは

格下げ車両とは、かつて優等車両として使用されていた鉄道車両やバスを、一般用として改造・転用したものを指します。鉄道においては、特別席車両や優等列車用車両が、バスにおいては観光バスがその対象となります。ここでは、格下げ車両の背景や詳細について解説します。

格下げ車両の背景

優等車両は、高速・長距離走行における快適性を重視した設計となっています。しかし、時代の流れとともに接客設備や性能は変化し、後継車両が登場すると旧型車両は見劣りするようになります。そのため、状態の良い車両であっても、性能や設備面でランクが劣る車両は、一般車両へと格下げされることがありました。近年では、車両全体の水準が向上したことや、優等車両を一貫して使用する方針への転換、バスにおいてはバリアフリー対応の必要性などから、格下げ車両は減少傾向にあります。

鉄道における格下げの事例

優等車の格下げ

優等車の陳腐化に伴う格下げは、古くから行われてきました。新型優等車の登場により旧型優等車が格下げされるのは、必然的な流れでした。一等車や二等車がそれぞれ二等車、三等車に格下げされるだけでなく、合造車や荷物車、郵便荷物車、事業用車に改造される例もありました。中には、皇室用の供奉車が種車となったケースも存在します。

国鉄・JRの座席車では、リクライニングシートを備えた特別二等車に比べて設備が劣るボックスシートなどは、普通車に格下げられました。グリーン車では、急行形車両において座席を交換せずに普通車の指定席に転用した例や、交直流電車の先頭車不足を補うために改造された車両も存在しました。

優等列車用車両の格下げ

優等列車用車両の格下げには、扉の増設を伴わないもの、扉の増設を伴うもの、近郊形グリーン車への格下げなどがあります。後継車両に置き換えられた特急・急行用車両を一般列車に転用することで、高性能化や冷房化、老朽化した車両の置き換え、輸送力増強などが図られました。

扉の増設を伴わない例としては、急行形車両を原形に近い形で普通列車に転用したケースがあります。座席の一部または全部をロングシートに改造した車両も存在します。一方、扉の増設を伴う例としては、国鉄・JRよりも私鉄の旧型車に多く見られました。特に、料金不要の優等列車を多く設定している鉄道会社では、高性能車でも扉の増設を伴う格下げ改造が行われました。また、サロ110・112形は特急形・急行形車両の改造で賄われました。

格下げを前提とした車両

登場当初から、将来的な格下げを前提として製造された車両も存在します。これらの車両は、外観や内装は優等列車用車両と同様ですが、システム上は一般車両として扱われます。例えば、小田急電鉄の2300形電車は、3000形電車の導入後に格下げされることを前提としていました。また、近畿日本鉄道の6431系電車も、標準軌への改軌後に一般車へ格下げされることが予定されていました。

車体更新・機器流用

優等列車用車両の機器を流用したり、一般車両の車体に載せ替えた車両も存在します。この改造では、車体は新製車両と同等となりますが、車両性能は種車のままとなります。国鉄・JRでは、交直流急行形電車の車体を載せ替えて近郊形電車に改造した例や、165系電車の機器を流用した通勤形電車などがあります。

バスにおける格下げの事例

バスにおいては、観光バスに運賃表示器や運賃箱などのワンマン運転用の機器と方向幕を設置し、路線バスに転用するケースが見られました。かつては観光バスも路線バスも標準床が主流でしたが、観光バスのハイデッカー化が進むと、一般路線では使いづらくなり、ハイデッカー車に扉を増設した格下げ改造車は少なくなりました。また、バリアフリー対応の観点から、最近では高速バスに転用されるケースが多くなっています。

まとめ

格下げ車両は、鉄道やバスにおいて、車両の有効活用や輸送力増強に貢献してきました。しかし、車両の水準向上やバリアフリー化の進展などにより、近年ではその数は減少傾向にあります。格下げ車両の歴史を振り返ることは、鉄道やバスの技術史や社会の変化を理解する上で貴重な視点を提供してくれます。

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