桂久武

桂久武（かつら ひさたけ）：激動の時代を駆け抜けた薩摩の志士

桂久武は、幕末から明治にかけて活躍した薩摩藩士、政治家です。島津氏の分家である日置島津家出身で、後に同じ島津氏分家の桂家の養子となりました。兄に島津久徴、赤山靭負がいます。

激動の幕末期

安政2年（1855年）、桂家の養子となった久武は、造士館演武係方などの要職を歴任しました。しかし、兄・島津久徴が島津斉彬派であったため、斉彬の死後、大島守衛方・銅鉱山方へ左遷されます。この左遷中に、西郷隆盛と親交を深めます。

文久3年（1863年）には藩庁に復帰。都城領内で保守派と尊皇派が対立していた際、誠忠派（尊皇派）への処分を取り消すなど、公正な判断を示しました。元治元年（1864年）には大目付となり、小松帯刀らと共に藩論をまとめ、慶応元年（1865年）には家老に昇進します。上洛後、桂小五郎を厚遇し、薩長同盟の締結に尽力しました。以来、西郷隆盛から厚い信頼を受け、武力討幕を支持しました。

明治新政府での活躍

明治3年（1870年）、西郷と共に鹿児島藩権大参事となり、藩政を主導します。明治4年（1871年）11月14日の都城県誕生に伴い、同年12月4日には県参事に就任。都城県政の責任者として、県政をスタートさせます。県政運営においては、中央政府との関係を重視し、産業振興と人材育成に力を注ぎました。特に教育に力を入れ、都城女学校（後の女学館）の開設に尽力しました。

都城県参事としての日々を記録した日記からは、教育施設の拡充に尽力する様子が窺えます。また、県域に加わった旧飫肥藩領の士族の動向を気にかけ、連絡・指導に配慮した様子も記録されています。一方で、霧島開拓にも尽力しており、士族の救済にも関心を寄せていたことが伺えます。

久武は都城、鹿児島、美々津三県の管轄地交替にも尽力しました。県境設定で民情が考慮されていなかった問題を解決するため、鹿児島県参事の大山綱良と協力し、政府に働きかけました。その結果、都城県の一部が鹿児島県に移管されました。これらの活動は、中央政府の参議であった西郷隆盛の強力な支援があったと考えられます。

また、大久保利通や五代友厚とも交流がありました。特に五代とは密接な関係を築き、書簡のやり取りを通して、経済や産業に関する様々な問題について意見を交換しました。久武は、五代に対し、鹿児島県の産業振興のために商社設立を提案し、山ヶ野金山の再開発を訴えました。五代も久武の熱意を理解し、様々な面で協力しました。特に廃藩置県後の鹿児島県の状況を案じ、久武に情報交換を求めています。

都城県参事辞任後

明治6年（1873年）1月15日の都城県廃止に伴い、豊岡県県令就任を打診されますが、健康上の理由で辞退しました。その後、大蔵省から出仕を求められますが、丁重に断りました。久武は、五代友厚に鉱山開発を委任し、その利益で教育費を賄おうと計画していました。山ヶ野金山の再開発にも引き続き強い関心を持ち、フランス人技師を招聘するなど、積極的な取り組みを行いました。

西南戦争と最期

明治10年（1877年）、西南戦争が勃発すると、当初は従軍する意思がなかったものの、西郷隆盛の出陣を見送る際に翻意し、西郷軍に加わりました。輜重の責任者として活動しましたが、同年9月24日の城山での戦いで流れ弾に当たり戦死しました。享年47歳。大正5年（1916年）、その功績を認められ従五位を追贈されました。

逸話

西南戦争では弓矢を装備して戦ったとされ、日本の戦史上、最後に弓矢を用いた人物とされています。

桂久武は、激動の時代を駆け抜けた薩摩の志士でした。藩政改革、明治維新、新政府での県政運営、そして西南戦争と、様々な局面でその手腕を発揮し、日本の近代化に貢献しました。教育や産業振興に力を注いだ一方で、士族救済にも尽力し、常に人々の生活向上を考えていた人物でした。

参考文献

「桂久武日記」（『鹿児島県史料集』26巻所収）
「桂久武書簡」（『鹿児島県史料集』30巻所収）
『朝日日本歴史人物事典』
市村哲二. “廃藩置県前後の鹿児島地方行政における桂久武の動向について”. 2023年1月31日閲覧。

登場作品

テレビドラマ『田原坂』（1987年、日本テレビ、演：竜雷太）
テレビドラマ『西郷どん』（2018年、NHK大河ドラマ、演：井戸田潤）

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