桂文枝 (5代目)

五代目 桂文枝：上方落語復興の功労者

五代目 桂文枝（1930年4月12日 - 2005年3月12日）は、上方落語界を代表する落語家です。六代目笑福亭松鶴、三代目桂米朝、三代目桂春団治と共に、昭和の「上方落語の四天王」と称され、戦後の上方落語の復興に尽力しました。

生い立ちと入門

大阪市北区天神橋筋六丁目に生まれた文枝は、幼少期に釜山での生活を経験した後、大阪市立天王寺商業学校に入学。戦時中は海軍電測学校で過ごしました。戦後、大阪市交通局に勤務する傍ら、趣味の踊りを通じて四代目桂文枝に入門。二代目桂あやめを名乗り、1947年に初舞台を踏みました。その後、交通局を退職し、落語家としての道を歩み始めます。

分裂騒動と苦難の時代

落語家として歩み始めた矢先、上方落語界は分裂騒動に見舞われます。師匠の四代目文枝が浪花新生三友派に参加する一方、あやめは五代目笑福亭松鶴に師事することを望み、最終的に戎橋松竹に残りました。しかし、騒動後、丹波家九里丸によって戎橋松竹から締め出され、歌舞伎の囃子方への転向を余儀なくされます。梅屋多三郎を名乗り活動するも、肺結核を発症し、約2年間の入院生活を送りました。

復帰、そして上方落語協会へ

病からの回復後、中田つるじの尽力により笑福亭鶴二の名で落語会に出演。その後、四代目文枝の承諾を得て、1954年に三代目桂小文枝として復帰を果たしました。1957年には上方落語協会の結成に幹事として参加。小文枝、四代目笑福亭枝鶴、三代目桂米朝、二代目桂福團治、三代目林家染丸の5人は「上方落語五人男」と呼ばれるようになり、後に染丸を除いた4人が「上方落語の四天王」として知られるようになりました。

活躍と五代目襲名

1961年からはNHKの「上方落語の会」で「天王寺詣り」や「たちきれ線香」といった得意の演目を披露。1984年には上方落語協会会長に就任し、後進の育成にも尽力しました。1992年、長年の功績が認められ、五代目桂文枝を襲名。襲名披露公演は全国各地で開催され、大きな話題となりました。

海外公演と数々の受賞

1980年代以降は、海外での公演も積極的に行い、上方落語の普及に貢献しました。また、数々の賞を受賞し、その功績を称えられました。主な受賞歴として、大阪文化祭賞、芸術祭優秀賞、上方お笑い大賞大賞、大阪市民賞、文化庁芸術祭賞、大阪芸術賞、紫綬褒章、旭日小綬章などが挙げられます。

晩年と死後

晩年は新作落語にも取り組み、2004年には自作の「熊野詣」を初演。しかし、2005年3月12日、肺がんのため74歳で逝去しました。

死後も、その功績を称える記念碑が建立され、数々のCDやDVDが発売されています。孫が落語家を志し、五代目文枝の遺志を継いでいます。

芸風と人物

文枝の芸風は、上方落語特有のお囃子を取り入れた華やかで陽気な語り口が特徴です。女性を主人公とした演目を得意とし、「立ち切れ線香」や「悋気の独楽」といった演目は、今もなお多くの人に愛されています。温厚な人柄で知られましたが、芸に対しては厳しく、弟子への指導も熱心でした。

主な演目

立ち切れ線香
悋気の独楽
天王寺詣り
三十石
百年目
熊野詣

著書

* あんけら荘夜話

五代目桂文枝は、上方落語の復興に大きく貢献しただけでなく、多くの弟子を育成し、上方落語の魅力を広く伝えた偉大な落語家でした。

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