桂米之助 (3代目)

三代目桂米之助：落語への情熱を生涯貫いた大阪の噺家

三代目桂米之助（1928年11月8日-1999年3月5日）は、大阪市出身の著名な上方落語家です。本名は矢倉悦夫。幼少期より映画や落語に親しみ、熱心に資料収集を行うなど、独特の感性を持っていました。その才能は作家・正岡容にも認められ、交流を持つ中で、後の三代目桂米朝である中川清とも出会うことになります。

映画ポスターやビラの収集は並々ならぬもので、正岡容はそれを榎本健一や古川ロッパに寄贈するほどでした。しかし、三人は米之助の実家の職業を推測する中で、印刷屋の息子という誤解が生まれました。実際は、映画館を経営する父親を持つ家庭環境でした。

戦時中の1943年8月には大阪市交通局に入局し、天王寺車庫で後に五代目桂文枝となる長谷川多持と出会います。米之助は文枝の落語家への道を後押しするなど、人との繋がりを大切にしていました。

1947年7月、かねてより親交のあった四代目桂米團治に入門し、「米之助」の名を継承します。師匠と同じ名跡を襲名したことで、中川清（三代目桂米朝）も米團治に入門し、長谷川多持（五代目桂文枝）も落語家への道を歩むことになります。しかし、米之助自身は母親の反対により、落語家を本業とすることは叶いませんでした。それでも大阪市交通局で定年まで勤め上げ、落語への情熱を持ち続けました。

本業のかたわら、米之助は積極的に落語界に関わりました。高座に上がり、後進の育成にも力を注ぎました。1972年8月からは自宅のある東大阪市菱屋地区で「岩田寄席」を主宰し、桂べかこ（三代目桂南光）、笑福亭松葉（七代目笑福亭松鶴）、桂春若、桂米輔、桂米太郎といった若手落語家の育成に尽力しました。特に1970年入門組である5人を「花の四十五年組」と呼び、その活躍を支えました。寄席のプログラムには「晩雅郎」という筆名でコラムを執筆するなど、多才ぶりを発揮しました。「岩田寄席」は20周年を迎えた1992年8月に幕を閉じました。

1998年11月には、ワッハ上方で古希記念独演会を開催。落語への情熱は衰えることなく、多くのファンを魅了しました。しかし、その4ヶ月後の1999年3月に亡くなりました。

米之助の落語に関する知識は豊富で、桂米朝は「わからないことは悦ちゃん（米之助）に聞け」と言うほどでした。また、『落語漫歩　大阪ふらり』、『浪花なんでも地名ばなし』、『上方落語よもやま草紙』など、数々の著書も残しています。

プロの落語家にならなかったことについて、六代目笑福亭松鶴は「自分を知っとる。噺がヘタです。聞いたらお客さんおこりますわ。商売にならなかったんです。」と語っています。しかし、彼の落語への貢献は計り知れません。

CD-ROM『古今東西噺家紳士録』には、NHKで演じた『花筏』が収録されています。

数々の受賞歴も輝かしいものです。1981年には日本芸能実演家団体協議会（芸団協）芸能功労者表彰、1983年には上方お笑い大賞功労賞、2003年には上方芸能文化顕彰を受賞しました。

三代目桂米之助は、落語家としてだけでなく、落語界を支えた重要な人物でした。彼の功績は、これからも多くの人に語り継がれていくでしょう。

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