桂萬光

桂萬光

桂萬光は、上方落語において歴史を持つ名跡です。現在では空き名跡となっていますが、その歴史は初代から三代目まで、個性豊かな落語家たちによって彩られてきました。本稿では、各代々の桂萬光について詳細に見ていきます。

初代 桂萬光

初代桂萬光については、生没年や本名など、詳しい記録は残されていません。唯一分かっていることは、後の桂文左衛門となる二代目桂文枝が桂南光を名乗っていた頃の最初の師匠であったということです。残念ながら、その生涯や芸風については謎に包まれたままです。

二代目 桂萬光

二代目桂萬光(1841年-1905年)は、本名上村亀之助。大阪市中央区安堂寺町生まれで、刀屋の堀江與助の次男でした。明治維新による廃刀令で家業が廃業すると、芸事を愛好する性格から北新地で幇間となり、「九八」を名乗っていました。36歳という比較的遅い年齢で、二代目月亭文都に入門し「都治」を名乗った後、二代目桂文枝の門下に移り、2代目萬光を襲名しました。

幇間出身という経歴からか、茶屋噺を得意としていました。『せむし茶屋（卯の日参り）』『死人茶屋』『桜の宮』などが十八番で、『一休』も得意としていたようです。中年からの落語家人生ということもあり、大きな名声は得られませんでしたが、桂派の重鎮として活躍しました。小柄で喘息持ちという体格ながら、その芸の力は高く評価されており、持ちネタは何度聞いても人を笑わせるほどの力量を持っていたと伝えられています。四代目桂米團治は、二代目萬光を深く敬愛しており、若い頃は咳の仕草まで真似ていたという逸話も残っています。趣味で鴬を飼っていたという記録も興味深いです。1905年4月6日、法善寺金沢亭と新町瓢亭での『一休』が最後の高座となりました。弟子には笑福亭圓歌がいます。

三代目 桂萬光

三代目桂萬光(1873年-1917年)は、本名伊豆徳松。兄弟3人揃って落語好きで、播重席の素人落語会に出演するほどでした。後に3人とも初代桂枝雀に入門し、長男は雀四郎、三代目萬光自身は雀之助、弟は雀三郎（後の二代目桂小文枝）を名乗りました。1912年5月に三代目萬光を襲名し、同年結成された寿々女会で師匠である枝雀と行動を共にするも、その後三友派に移籍しました。

大きな目から「台湾金魚」というあだ名で呼ばれた三代目萬光は、稽古熱心で、先輩後輩への気配りも欠かさない人柄で、同業者からの信頼も厚かったようです。持ちネタも多く、芸の腕前にも問題はなかったのですが、舞台度胸に少し欠けていたため、器用貧乏に終わり、多くの贔屓客を得ることができず、常に貧乏暮らしだったといいます。大柄で女性に人気のあった弟の小文枝とは対照的な人物で、芸人としての評価においても弟に及ばず、不遇な生涯を送ったようです。しかしながら、ネタ数は多く、二代目から受け継いだ『せむし茶屋（卯の日参り）』『一休』などを十八番としていました。また、大きな目を生かした顔芸や四つ竹などの珍芸・余芸も持ち合わせていました。SPレコードには、『まんじゅうこわい』を構成し直した『饅頭喰ひ』と、『正月丁稚』が残されています。弟子には桂萬十（後の林家染蔵）がいます。

参考文献

『落語系圖』（月亭春松編）
『古今東西落語家事典』（平凡社、1989年）
『上方はなし』第26集「近世落語家伝」7（4代目桂米團治著）
『続・上方落語ノート』（桂米朝著、青蛙房、1989年）p79-81 - 7代目文治門下の萬光について
* 『古今東西噺家紳士録』

このように、桂萬光という名跡には、それぞれの個性と魅力を持った落語家たちがいました。彼らが築き上げた歴史は、上方落語の豊かな伝統を物語っています。

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