桜堂薬師

櫻堂薬師（さくらどうやくし）

岐阜県瑞浪市土岐町にある櫻堂薬師は、正式には瑞櫻山法明寺という天台宗の寺院です。地元では「桜堂薬師」の名で親しまれています。この寺院は、弘仁元年（810年）に覚祐によって開かれ、その歴史は1200年以上にも及びます。

歴史

法明寺の創建

創建者である覚祐は、比叡山の円仁の弟子で、諸国を巡礼中に桜の葉の虫食いの跡が経文になっているのを見つけ、この霊木で薬師如来像を彫ったと伝えられています。弘仁3年(812年)には堂宇が建立され、元々祀られていた医王薬師像を胎内仏として納め、瑞櫻山法明寺と名付けられました。寺号の由来は、桜の葉に現れた法名・法命・寶命・法妙という文字に因むとされています。

勅願寺としての繁栄

その後、覚祐が嵯峨天皇の病を祈祷で治したことから、朝廷の勅願寺となり、七堂伽藍が建立され、仁王門や弁財天、山王権現、熊野権現なども整えられました。寺領や封戸を与えられ、国分寺に準じる定額寺として隆盛を極めました。覚祐は、その功績から三諦上人という号を授けられ、高僧として崇められました。

中世の法明寺

鎌倉時代には、桜の名所として知られ、幕府や貴族からの寺領寄進も受けていました。室町時代には、比叡山延暦寺の末寺として、24坊あるいは36坊とも言われる多くの坊院を有し、比叡山、高野山と並ぶ日本三山の一つと称されるほどでした。しかし、戦国時代になると織田信長の家臣である森長可の攻撃を受け、堂宇は焼失してしまいます。

江戸時代の復興と衰退

その後、森長可や土岐三兵信友によって再建されましたが、江戸時代に入り、岩村藩主の松平氏による庇護を受けながらも、藩主の国替えにより衰退に向かいました。万治3年(1660年)には、天台宗の僧である永秀によって復興が図られ、現在の薬師堂が再建されました。しかし、慶応4年（1868年）の神仏分離令によって無住となり、櫻堂薬師と呼ばれるようになりました。

境内

境内には観音堂があり、峰山観音として祀られていた観音菩薩像が安置されています。本堂の蛙股には、勅願所であった当時の名残として菊花の紋が刻まれています。また、鶴池や亀池、蓮の花、老杉などが、往時の面影を伝えます。かつて、元正天皇の皇女の病を癒したという伝説が残る疣岩という霊石も存在します。境内には、本坊や被官坊の跡地に散らばっていた五輪塔や宝篋印塔を集めた薬師石塔群があります。また、櫻堂薬師の東側には、神仏分離令によって創建された櫻宮神社があり、山王権現が祀られています。

寺宝

かつては、陵王、抜頭、納曽利の舞楽面や、大給松平氏、丹羽氏、名古屋の商人によって奉納された絵馬などの貴重な寺宝が数多くありましたが、平成14年（2002年）に盗難に遭い、多くが失われてしまいました。現在、瑞浪市と岐阜県の文化財に指定されていたこれらの寺宝は、残念ながらその多くを直接見ることはできません。

その他の情報

三諦上人供養塔：寺の東の山中には、覚祐（三諦上人）の供養塔があり、岐阜県最古の記銘石造建造物として県指定の史跡となっています。
法明寺経筒：和歌山県の熊野那智大社から出土した経筒には、法明寺の銘が刻まれており、当時の法明寺が実在したことを示す貴重な資料となっています。

櫻堂薬師は、創建から1200年以上の歴史を持ち、多くの文化財や歴史的背景を持つ寺院です。往時の繁栄は失われましたが、今もなお、静かにその歴史を語りかけています。

関連リンク

【第八番】 瑞櫻山　櫻堂薬師　瑞浪市観光協会
桜堂薬師本堂 附宮殿　瑞浪市役所
桜堂薬師仁王門　瑞浪市役所
桜堂薬師舞楽面　瑞浪市役所
桜堂絵馬　岐阜県公式ホームページ
桜堂薬師舞楽面　岐阜県公式ホームページ

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