森長可

森長可：鬼武蔵と恐れられた戦国武将

森長可（もりながよし）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将・大名です。その武勇から「鬼武蔵」と恐れられ、織田信長に重用されました。本姓は源氏で、清和[[源氏]]の流れを汲む森氏の出身です。父は森可成、兄に森可隆、弟に森成利がいます。

家督相続と初陣

永禄元年（1558年）に生まれた長可は、元亀元年（1570年）に父・可成が戦死したため、13歳という若さで家督を継ぎました。織田信長に仕え、一字拝領して勝蔵長可と名乗ります。元亀3年（1572年）には、羽柴秀吉らと共に文書に連署しており、15歳にして重臣と同等の活躍を見せています。

元亀4年（1573年）3月、長可は織田信忠の部隊に加わり、長島一向一揆攻めで初陣を飾ります。稲葉良通らと共に一揆勢に突撃し、その武勇を示しました。その後も、槇島城の戦いや長島一向一揆攻めなどで功を挙げ、信忠配下の武将として長篠の戦い、美濃岩村城攻め、越中国侵攻、摂津石山本願寺攻め、三木合戦などに参加し、数々の武功を重ねました。

内政手腕と領地経営

天正5年（1577年）頃からは、内政にも参加するようになり、兼山城（岐阜県可児市）周辺の発展に尽力しました。木曽川を利用した商業を重視し、河港の整備、城下町の区画整理、六斎市の開催などを行い、領内の経済発展に貢献しました。また、海産物の専売制を敷き、税収を確保するなど、優れた内政手腕を発揮しました。この専売制は森家が美濃を去った後も、商人たちの請願により、尾張藩によって維持され、明治時代まで続きました。

甲州征伐と信濃入領

天正10年（1582年）の甲州征伐では、先鋒部隊の将として活躍しました。木曽口から武田領に侵攻し、松尾城や飯田城を攻略。高遠城攻めでは、月蔵山を登り、城内へ鉄砲を撃ち込み、城の陥落に貢献しました。これらの戦功により、武田氏滅亡後、信濃川中島四郡（高井・水内・更級・埴科）と海津城20万石を与えられました。

しかし、信濃国の情勢は不安定で、上杉氏と結んだ旧武田家臣による一揆が発生しました。長可は、これをわずか2日で鎮圧し、支配を確立しました。その後、国衆の妻子を海津城に住まわせることを義務付け、領内への禁制発布、信濃国衆との会談などを行い、統治の確立に努めました。

越後侵攻と本能寺の変

信濃国の仕置きを終えた長可は、上杉景勝が柴田勝家に攻められている越中魚津城の救援に向かったという知らせを受け、越後国へ出兵しました。関川口の守りを突破し、田切城を落として上杉領深くまで侵攻、春日山城に迫りました。これにより、景勝は魚津城の救援を諦めざるを得なくなり、魚津城は柴田軍によって陥落しました。

しかし、6月2日に本能寺の変で信長が討たれたため、長可は窮地に立たされます。信濃国衆の裏切りに遭いながらも、人質を連れて撤退を開始。木曽福島城を迂回せず、奇襲を仕掛け、木曾義昌の暗殺計画を阻止しました。その後、旧領である金山へと帰還しました。

東美濃統一

旧領に帰還した長可は、離反した勢力を次々と撃破。肥田忠政の米田城を攻め、加治田・兼山合戦を経て、東濃における勢力を拡大しました。その後、久々利頼興を討ち、苗木城を攻略。東美濃全域ならびに中濃の一部を制圧しました。その後、多くの城を廃城処分し、領内の統治を安定させました。

小牧・長久手の戦いと最期

天正12年（1584年）、小牧・長久手の戦いでは、羽柴秀吉方につきました。羽黒の戦いでは、徳川軍の奇襲を受け敗北しますが、その後、三河国中入り部隊に加わり、岩崎城の戦いで奮戦し、丹羽氏重らを討ち取りました。しかし、長久手において、井伊直政の軍と激突し、水野勝成の家臣に狙撃され、27歳という若さで戦死しました。その戦死地には「武蔵塚」が建てられています。

死後

長可の死後、遺言状が秀吉に届けられましたが、遺言の一節は無視され、子の仙千代（後の森忠政）が跡を継ぎました。長可の首は、森家の小姓によって持ち帰られ、徳川軍には渡りませんでした。

人物像

長可は、父・可成同様に槍術に優れ、「鬼武蔵」と恐れられるほどの武勇を誇りました。また、書を好み、能筆であり、茶道にも造詣が深い人物でした。戦場でも矢立と紙を携帯し、自ら筆を執ったといわれています。

逸話

武蔵守の由来には、瀬田の関所で関守を斬り捨てたという伝説があります。高遠城攻めの際には、返り血で鎧が真っ赤に染まっていたという逸話も残っています。また、小牧・長久手の戦いに出陣する前には、娘の結婚相手について遺言を残しています。

主要家臣団

長可には、各務元正、林為忠、林通安、大塚丹後守、武藤兼友などの譜代の家臣がいました。また、信濃時代には、春日昌元、屋代政国、出浦盛清、室賀満正などの与力がいました。本能寺の変以降は、安田国継、井戸宇右衛門、妻木頼忠らが家臣に加わっています。

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