梅之煥

梅之煥（ばい しかん、1575年 - 1641年）は、明代の官僚であり、軍人としても活躍した人物です。字は彬父、号は長公と称しました。彼の本貫は黄州府麻城県にあります。

若き日の逸話と官界への進出

梅之煥は、侍郎の梅国楨の甥にあたります。14歳で諸生となり、その才能を早くから見せていました。ある時、御史が武事を講習しているところに、梅之煥は馬に乗って教場に突入するという大胆な行動に出ます。御史は激怒しましたが、梅之煥に材官との弓術対決を命じました。梅之煥は見事に九発九中させ、拱手して拝礼し、颯爽と去って行ったと伝えられています。このエピソードは、彼の若き日の勇敢さと並外れた才能を示しています。

1604年（万暦32年）には進士に及第し、翰林院庶吉士となります。その後、1610年（万暦38年）には吏科給事中に任じられ、官僚としてのキャリアを本格的にスタートさせました。在任中には、東廠太監の李浚が商人を誣告した事件で、その罪を弾劾するなど、正義感の強い一面を見せています。また、広東副使として赴任した際には、烈女を殺害した豪民の沈氏を捕らえて処刑するなど、地方においてもその手腕を発揮しました。

軍人としての活躍と政争への巻き込み

海賊の袁進が潮州を略奪した際には、梅之煥は海道を掌握し、袁進の一党を招撫して降伏させることに成功しました。その後、山東学政を経て、1621年（天啓元年）には通政参議として召喚され、太常寺少卿に転じます。さらに右僉都御史に抜擢され、南贛巡撫を歴任しました。しかし、内外の情勢が悪化すると、梅之煥は一時的に麻城の自宅で過ごすことになります。

当時の朝廷は、魏忠賢と客氏によって混乱していました。1624年（天啓4年）に楊漣が魏忠賢の二十四大罪を弾劾したことで、政治的な混乱はさらに深まります。翌年、魏忠賢は楊漣を捕らえて処刑しましたが、その際、楊漣が麻城を通過したという噂が流れました。梅之煥は楊漣のために涙を流したとされていますが、実際には楊漣は麻城を通過していなかったようです。この一件で、梅之煥は官籍を削られることになります。

その後、梁克順によって不正に財産を蓄えたとして誣告され、財産没収を命じられますが、1628年（崇禎元年）にはこれらの処分は撤回され、もとの官に復帰し、甘粛巡撫に任命されました。甘粛では、オルドス部を破り、多数の敵を斬首し、捕虜にするという戦果を挙げています。1629年（崇禎2年）冬には、北京に戒厳が布かれたため、入衛を命じられましたが、西部が河西回廊に侵犯したため、甘粛に留まり、敵を撃退しました。1630年（崇禎3年）には、王進才の反乱を鎮圧し、再び軍を東に進めています。

晩年と最期

1633年（崇禎6年）には、温体仁が銭謙益を弾劾した際に、梅之煥は銭謙益を擁護したために罪を得て免官となります。そして、1641年（崇禎14年）8月、病によりこの世を去りました。享年67歳でした。

梅之煥は、官僚としても軍人としても優れた能力を発揮しましたが、その生涯は政治的な混乱に翻弄された側面もありました。彼の行動は、正義感と勇敢さに満ちており、後世に語り継がれるべき人物と言えるでしょう。

子女

梅之煥には、息子として梅生奇がいます。

参考文献

この記述は、『明史』巻248 列伝第136を参考にしています。

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