梅暮里谷峨

初代梅暮里谷峨：江戸時代の洒落本作家

1750年（寛永3年）、上総国久留里藩士の家に生まれた梅暮里谷峨（うめぼりこくが）は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した戯作者であり、藩士でもあります。通称は反町三郎助、後に与左衛門と名乗り、梅月堂梶人、蕣亭、遊里山人といった複数の筆名も用いました。「谷峨」は母方の姓に由来し、「梅暮里」は本所埋堀にあった藩邸にちなむとされています。没後には、江戸幕府の旗本である萩原乙彦が二代目梅暮里谷峨を名乗ったため、初代として区別されるようになりました。

藩士としての生涯と創作活動

谷峨は36歳で藩に仕え始め、45歳で家督を相続して馬廻席（50石取）となりました。その後、江戸詰め大目付にまで昇進するなど、藩士としての経歴を着実に歩みました。しかし、谷峨の知られる所以は、その藩士としての職務以上に、数々の洒落本を著した戯作者としての活躍にあります。

38歳の頃、梅月堂梶人という筆名で洒落本の創作を開始し、『青楼五雁金』（1788年）を発表しました。その後、『染抜五所紋』（1790年）を発表するなど精力的に作品を発表しますが、しばらくの間は作品発表が途絶えます。1798年、『傾城買二筋道』を発表し、本格的に創作活動を再開。晩年の洒落本界を牽引する存在となりました。

作品の特徴と評価

谷峨の作品は、軽妙洒脱な洒落本として高く評価されていますが、単なる滑稽話にとどまらず、当時の社会情勢や人々の心情を巧みに反映している点が特徴です。特に、『傾城買二筋道』は、洒落本と人情本の要素を融合させた作品として知られており、谷峨の作風における独自性を示す重要な作品と言えます。『郭の癖』、『白狐通』など、多くの作品を発表し、当時の読者に広く親しまれました。

謎の残る生涯

谷峨の生涯については、いまだ不明な点が多く残されています。特に、梅月堂梶人、遊里山人といった複数の筆名を使用していたことから、これらが同一人物なのか、別の人物なのかという議論が、研究者の間で続いています。尾崎久彌は梅月堂梶人と谷峨を同一人物とみなす説を唱えた一方、棚橋正博は別人と主張するなど、複数の見解が存在しており、今後さらなる研究が必要とされています。

主な作品

『青楼五雁金』（1788年） - 梅月堂梶人名義
『染抜五所紋』（1790年）
『文選臥座』（1790年） - 梅暮里谷峨名義の合作
『傾城買二筋道』（1798年）
『郭の癖』（1799年）
『白狐通』（1800年）

まとめ

梅暮里谷峨は、藩士としてのキャリアと並行して、数々の洒落本を発表した江戸時代後期の代表的な戯作者です。軽妙なユーモアと社会への鋭い洞察を兼ね備えた作品群は、現代においても高い評価を受けており、その生涯と作品は、江戸時代の文化を理解する上で貴重な資料となっています。今後の研究によって、まだ明らかになっていない部分も解明されることが期待されます。

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