梗塞

梗塞とは

梗塞とは、血管が閉塞することにより、その血管が栄養を供給している領域の組織が酸素不足（虚血）に陥り、最終的に細胞が壊死してしまう状態を指します。特に、末端の動脈や静脈が閉塞した場合に起こりやすく、細胞組織が不可逆的な損傷を受ける限局性の壊死、多くは凝固壊死を引き起こします。一般的に、静脈よりも動脈の閉塞によって虚血性壊死が発生しやすいとされています。

梗塞の種類

梗塞は、その発生機序や特徴によっていくつかの種類に分類されます。

貧血性梗塞（白色梗塞）

主に動脈の閉塞によって引き起こされ、脳梗塞、心筋梗塞、脾臓梗塞、腎臓梗塞などで見られます。特徴として、壊死した組織は蒼白に見えるため、白色梗塞とも呼ばれます。特に脳梗塞では、壊死した脳組織は融解壊死を起こし、脳軟化症と呼ばれる状態になります。形状は楔形をしており、立体的には円錐形に見えます。

出血性梗塞（赤色梗塞）

静脈の閉塞、あるいは動脈閉塞に続いて静脈閉塞が起こる場合、または、動脈閉塞に静脈閉塞が加わる場合に発生します。血管が二重に分布している臓器（肺、肝臓、腸管、生殖器など）で起こりやすいとされています。出血を伴うため、暗赤色を呈し、形状は楔形ではなく、地図状に見えます。例えば、小腸の絞扼性腸閉塞、卵巣嚢胞の捻転、静脈性血栓症などが原因で、脾臓や腎臓、脳に出血性梗塞が生じることがあります。

新鮮梗塞

発症初期の梗塞で、鬱血や浮腫、出血により、患部の臓器は腫れて膨らみます。時間経過とともに、梗塞巣は蒼白から灰白色に変化し、周囲組織との境界が明確になります。

陳旧性梗塞

梗塞が慢性化した状態です。梗塞巣には肉芽組織が出現し、その後、線維化が進んで瘢痕組織へと変化します。肉眼的には灰白色を呈し、表面は陥没したり、凹凸が目立つようになります。ただし、梗塞巣が大きい場合や修復が不十分な場合は、完全に凝固壊死せず、中心部が液化軟化（融解壊死）した状態になることがあります。その後、嚢胞形成や石灰化が起こることがあります。脳組織の場合、凝固壊死ではなく軟化融解を起こすのは、脳組織の類脂質が蛋白凝固を阻害するためです。

梗塞の成因

梗塞の主な原因は、血栓や塞栓による血管の閉塞です。その他、動脈硬化症などの血管病変も原因となります。血栓や塞栓による閉塞は、急激に発症しやすく、梗塞もほぼ完全で永久的なものとなることが多いです。

梗塞に関連する基礎疾患

梗塞は、様々な疾患と関連しています。

脳軟化症
静脈閉塞
動脈閉塞
融解壊死
絞扼性腸閉塞
卵巣嚢胞
静脈性血栓症
鬱血

梗塞によって引き起こされる主な疾患

梗塞は、以下のような疾患の原因となることがあります。

脳出血
心筋梗塞
脳梗塞
肺梗塞
ラクナ梗塞
脳血栓
脳塞栓
クモ膜下出血
脊髄梗塞

梗塞の臨床像

梗塞は、閉塞性動脈硬化症やバージャー病などの血管疾患と関連しており、これらの疾患は梗塞のリスクを高める要因となります。

関連事項

梗塞の理解を深める上で、以下の用語や概念も重要です。

血栓
塞栓
凝固・線溶系疾患
* 凝固機能検査

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