塞栓

塞栓（Embolism）

塞栓（そくせん）は、血液中に存在する塊（血栓や脂肪、微細な腫瘍細胞など）が血管に詰まり、正常な血流が妨げられる病態を指します。この現象は塞栓症とも呼ばれ、発生した部位や種類に応じて多様な症状が現れます。

塞栓の種類

1. 血栓性塞栓症

最も一般的なタイプで、血栓が剥がれて体内を移動し、異なる部位で塞栓を引き起こします。これは静脈や心臓にできた血栓が、肺や末梢動脈を塞いでしまうことが多いです。

2. アテローム塞栓症

動脈硬化によって破れたアテロームの破片が血流に乗り、主に大動脈、頸動脈、脳動脈辺りで見られる塞栓です。これにより腎機能が低下することもあります。

3. 腫瘍塞栓症

悪性腫瘍から発生した微細ながん細胞が血管内に浸潤し、静脈系で塞栓が形成されるケースです。これが原因で呼吸不全を引き起こすこともあると報告されています。

4. 脂肪塞栓症

主に骨折や外的傷害に続いて、骨髄内の脂肪が血流に入り込んで発生する塞栓であり、特に長管骨の骨折に関連して見られます。

5. 空気塞栓症

空気が血管に入り込むことで発生します。多くの場合、潜水病や輸血中の空気誤入、胸部手術中の合併症などが原因です。

6. 羊水塞栓症

妊娠中に発生する特異な形態で、胎児の成分が母体の血中に流入し、肺に塞栓を引き起こします。これにはさまざまなリスク要因が関与しています。

7. 細菌・真菌塞栓症

感染症の影響で、細菌や真菌の塊が血流に乗り、塞栓症を引き起こすこともあります。

8. 寄生虫（卵）塞栓症

寄生虫やその卵が血流中に入り込み、様々な器官で障害を引き起こします。特に腸や脳に関連する症例が多く見られます。

9. 門脈塞栓症

主に門脈に生じ、胃癌や肝細胞癌などの悪性疾患でしばしば観察される塊が原因です。

原因

塞栓の原因は、生体内の物質（血栓、脂肪、腫瘍、羊水、菌塊など）と生体外の物質（空気、窒素など）に分けられます。特に基礎疾患には糖尿病や血栓傾向、外傷、敗血症などが関与しています。

臨床像

塞栓が形成されると、その影響を受ける器官で血流が遮断され、虚血性の機能障害や壊死などの深刻な事態を招くことがあり、これが臓器不全につながります。

関連情報

この病態は、静脈血栓塞栓症などの関連疾患とも密接に関連しています。塞栓症を予防し、早期に発見することで、重篤な結果を回避することが可能です。

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