梨山

梨山（Lishan）

梨山は、台湾の台中市和平区に位置する山岳地帯の地区であり、多様な民族が共存する場所として知られています。タイヤル族をはじめ、様々な原住民、客家系、閩南系、そして退役軍人である栄誉国民などが暮らしています。梨山地区は、梨山を中心に、佳陽、松茂、環山といった集落で構成され、「大梨山」地区として親しまれています。

地理

梨山は中央山脈の山間部に位置し、大甲渓上流域の高位段丘にあります。標高は約2,000メートルで、温帯気候に属し、平均気温は約12度です。この気候が、梨、桃、リンゴなどの温帯果樹栽培に適しており、台湾有数の果物産地となっています。また、雪山山脈を望む美しい景観も魅力です。

かつて梨山の集落は大甲渓の低い地域にありましたが、中部横貫公路の開通に伴い、現在の梨山地区に移住しました。住民の多くは農業に従事し、温帯果実や高原野菜を栽培しています。また、大禹嶺に次いで高山茶の産地としても知られ、台湾高原茶の重要な生産地となっています。

歴史

梨山はタイヤル族が300年以上前に移り住んだ地であり、タイヤル語で'Slamaw'（スラマウ）と呼ばれています。日本統治時代には「サラマオ」と呼ばれ、1920年にはサラマオ事件が勃発しました。

1930年代には、日本の温帯果樹が試験的に導入され、梨山でのナシ栽培が始まりました。この成功が、戦後に梨山という地名の由来になったと言われています。1956年の中部横貫公路建設開始とともに、1957年には退役軍人のための福寿山農場が開設されました。その後、日本から様々な果樹が導入され、梨山周辺の山地集落に移植されました。1960年代には、清境農場や武陵農場も開設され、梨山地域は開発が進みました。1973年には梨山建設管理局が設立され、更なる開発が進められました。

温帯果実の産地として、また横貫公路開通による観光地として発展した梨山は、1965年に台中県政府によって「梨山風景特定区」に指定されました。その後、台中市政府に移管され、現在は獅頭山風景区、八卦山風景区と合わせて「參山国家風景区」として管理されています。

1999年の921大地震により、中部横貫公路が大きな被害を受け、梨山地域は深刻な影響を受けました。2004年の台風による被害も重なり、長らく交通が寸断されましたが、住民の嘆願により、2011年から地元住民や就労者の通行が規制付きで認められるようになりました。2018年には、中横便道を利用したバスの運行が開始され、交通の便が改善されました。現在、梨山には横貫公路の宜蘭支線が接続しており、宜蘭方面への路線も運行されています。

梨山は、その豊かな自然と歴史、そして多様な文化が織りなす魅力的な地域です。

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