中部横貫公路

中部横貫公路：台湾を東西に結ぶ大動脈

中部横貫公路、または東西横貫公路として知られるこの道路は、台湾の中央山脈を横断する主要な幹線道路です。一般には「中横公路」と呼ばれ、北部横貫公路、南部横貫公路と並び、台湾三大横貫公路の一つに数えられています。1960年5月9日に全線開通し、省道台8線としてその名が定着しました。しかし、度重なる自然災害により、その一部は長期にわたり通行止めとなり、現在も復旧作業が続けられています。

概要

中部横貫公路は、台中市東勢区の東勢大橋を起点とし、谷関、徳基、梨山、大禹嶺、関原、天祥を経て、花蓮県新城郷に至る省道です。その起源は日本統治時代の1914年に設けられた理蕃道路に遡ります。1956年7月7日に建設が開始され、1960年5月9日に開通しました。この道路は、台湾の西海岸と東海岸を結び、標高3000メートルを超える高山地帯を通過するため、その建設は困難を極めました。

路線

中部横貫公路は、中央山脈を貫通し、平地から標高3000メートルを超える合歓山まで、変化に富んだ地形を通過します。トンネルや渓谷の開削により、道は切り開かれ、途中には太魯閣国家公園も含まれています。省道台8線が本線であり、支線として宜蘭支線（台7甲線）と霧社支線（台14甲線）の2つが存在します。

本線

本線の西側の起点は台中市東勢区に位置し、大甲渓に沿って谷関、徳基、梨山、大禹嶺へと登っていきます。その後、関原を通過し、天祥からは立霧渓沿いに太魯閣峡、そして花蓮へと続きます。太魯閣から花蓮までは約26キロメートルです。開通当初の全長は192.782キロメートルでしたが、現在は187.797キロメートルとなっています。

- 東勢 - 33.8km - 谷関温泉（標高約800m）
- 谷関温泉 - 27.7km - 徳基ダム（標高1411m）
- 徳基ダム - 20km - 梨山（標高約2000m）
- 梨山 - 30.3m - 大禹嶺（標高2565m）
- 大禹嶺 - 4.9km - 関原（標高2374m）
- 関原 - 52.7km - 天祥（標高約450m）
- 天祥 - 18.9km - 太魯閣 - 新城

支線

中部横貫公路には、宜蘭支線と霧社支線の2つの支線があります。宜蘭支線（台7甲線）は、梨山から分岐して北上し、武陵農場付近を経て北部横貫公路に接続し、宜蘭へと続きます。梨山から宜蘭までの全長は約111.67キロメートルです。一方、霧社支線（台14甲線）は、大禹嶺から分岐し、武嶺、昆陽、そして清境農場を経て霧社へ至ります。霧社支線の全長は約41.719キロメートルです。

歴史

中部横貫公路の歴史は、日本統治時代の理蕃政策にまで遡ります。1914年の太魯閣戦争の際、軍事道路として開削されたのがその始まりでした。その後、太魯閣族やセデック族に対する理蕃道路として、1933年から1935年にかけて、霧社から合歓山、天祥、太魯閣、花蓮を結ぶ全長約105キロメートルの「合歓越嶺道路」が建設されました。

また、1922年には、梨山から西に向かう「大甲渓警備道路」が建設され、中部横貫公路の西部区間の大部分はこの道路と重なっています。1940年には、立霧渓の水力発電のため、太魯閣族の狩猟路を拡張しました。戦後、退役軍人の雇用と東部発展のため、東西を結ぶ横貫公路の建設が提唱され、1955年に「横貫公路開発委員会」が設立されました。1956年7月7日に建設が開始され、1960年5月9日に開通しました。工事には1万人を超える退役軍人が動員され、225名（226名とも）が殉職しました。この犠牲者を悼み、1958年に長春祠が建立されています。

観光バス転落事故

1986年10月8日、中部横貫公路の谷関で、観光バスが大型トラックと衝突し、渓谷に転落する事故が発生しました。この事故で42名が死亡、3名が負傷し、台湾の観光バス事故史上、最大の死者数を記録しました。

災害

中部横貫公路は、建設以来、豪雨による地すべりに悩まされてきました。特に1999年の921大地震では、谷関から徳基の区間が甚大な被害を受け、通行不能となりました。2004年の台風7号の影響で、修復された区間も再び崩壊し、長期にわたり通行止めとなりました。2011年になって、梨山の住民や就労者のための迂回路が設けられ、後に「中横便道」として整備されました。2018年11月16日には、この迂回路を利用したバスの定期運行が開始されました。

現在、交通部公路総局は、中横便道の安全性向上と本線の復旧を推進しており、2023年には脆弱な区間の強化策を国家発展委員会に提出しました。また、2024年 4月3日の花蓮地震により、落石や土砂崩れが発生し、一時通行止めとなりました。

まとめ

中部横貫公路は、台湾の歴史と自然が織りなす壮大な景観を体感できる重要な道路です。その建設には多くの犠牲があり、度重なる災害にも見舞われてきましたが、台湾の東西を結ぶ大動脈としての役割は今も変わらず、その復旧と保全に向けた努力が続けられています。

脚注

参考文献

『台湾自遊自在』日本交通公社出版事業局、1989年。ISBN 4-533-01464-X。
林炳炎「日本統治時代の大甲渓開発計画と臨時台湾経済審議会の関係」（PDF）『台湾史研究』第13号、台湾史研究会、1997年3月31日、25-53頁。
前圭一「大正三年太魯閣原住民討伐陸軍部隊における保甲人夫徴用（一）」（PDF）『大阪経済法科大学論集』第93号、大阪経済法科大学経法学会、2007年8月31日、1-98頁、ISSN 0287-9468。

中部横貫公路