梨木神社爆破事件

梨木神社爆破事件とは

梨木神社爆破事件は、1977年（昭和52年）1月1日に京都市上京区の梨木神社で発生した爆弾テロ事件です。この事件は、新左翼活動家であった加藤三郎によって引き起こされました。

事件の背景

梨木神社は、1885年に久邇宮朝彦親王の命により、旧三条邸に創建された神社です。明治維新に貢献した三条実万公が祀られており、後にその息子の三条実美公も合祀されました。加藤三郎は、三条実美公を「日本帝国主義の担い手となった明治政府の最高権力者（太政大臣）」と断じ、彼を祀る梨木神社を標的に選びました。

事件の概要

1977年1月1日午後8時45分頃、加藤三郎が事前に仕掛けた消火器爆弾が、梨木神社の本殿で爆発しました。爆発により火災が発生しましたが、宮司や禰宜による迅速な消火活動により、本殿の一部が焼損するに留まりました。事件が発生した日は元日でしたが、夜間であったため初詣の参拝客はおらず、幸いにも負傷者はいませんでした。警察の捜査により、現場から消火器の破片が発見され、消火器爆弾による爆破事件と断定されました。

1月5日、加藤は「闇の土蜘蛛」「浮穴媛のこどもたち」という名義で、犯行声明文をマスコミに郵送しました。声明文には、「三条実美の三つの罪状（搾取と抑圧の明治政府樹立、他民族に対する侵略、反体制運動の弾圧）により、爆破の刑に処す」と記されていました。「闇の土蜘蛛」は理解できるものの、「浮穴媛のこどもたち」というテロ組織らしからぬ名称を用いたのは、「父権的天皇制」に対するアンチテーゼであったとされています。加藤は、三条実美を明治政府の権力者として批判し、彼を祀る神社を爆破することで、自身の思想を表明しようとしたと考えられます。

加藤三郎について

加藤三郎は、新左翼活動家として知られており、この事件を起こした当時から過激な思想を持っていたと考えられます。彼は、後に「意見書　「大地の豚」からあなたへ」という著書を出版しており、自身の思想や事件に対する見解を明らかにしています。

事件の影響

この事件は、新左翼運動が過激化していた時代の象徴的な出来事の一つとして、社会に大きな衝撃を与えました。幸い、人的被害はなかったものの、文化的価値のある神社が標的となったことで、多くの人々に不安と衝撃を与えました。また、事件で使用された爆弾の形式などから、テロリズムの危険性についても広く認識されるきっかけとなりました。

参考文献

『京都新聞』1977年1月3日朝刊、1月13日朝刊
加藤三郎『意見書 「大地の豚」からあなたへ』思想の科学社、1992年

関連項目

日本原住民論
反日亡国論

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