梵網経 (大乗仏教)

概要

『梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品第十』、通称『梵網経』は、大乗仏教における重要な経典であり、特に菩薩戒に関する教えが説かれています。漢訳は鳩摩羅什によるもので、上下二巻から構成されています。下巻は「菩薩戒経」として知られ、基本的な戒律が示されています。この経典は、僧肇の序文によると、原本『梵網経』120巻61品のうちの1品を基にしていると言われています。

構成

『梵網経』は、上巻と下巻に大きく分かれています。上巻では、菩薩が修行者向けに持つべき四十種類の法門について述べられており、修行の深さや道筋についての指導がなされています。一方、下巻では「十重四十八軽戒」と呼ばれる具体的な禁戒について詳述されており、特に親への孝順を重視するなど、中国文化に根ざした教義も見受けられます。

歴史的背景

元々の原本は伝わっておらず、学術的には5世紀の南朝に成立した偽経、つまり中国で著述された経典とされる説が広まっています。この経典の特性は、パーリ語で書かれた上座部仏教の『梵網経』とは根本的に異なる内容を持つため、仏教の教義や戒律の発展に多様性を与えています。

影響と展開

後世の影響も無視できません。特に智顗は、天台宗の立場から『菩薩戒義疏』を著し、多くの人に菩薩戒を授け、その教えを広めました。また、唐代には法蔵が『梵網経菩薩戒本疏』を著し、内容の深化を図りました。他にも新羅の太賢が『菩薩戒本宗要』や『梵網経古迹記』を著し、その教えの普及に貢献しました。

日本においても、『古迹記』は多くの注釈書を生み出し、仏教の深化に寄与しました。さらに、空海は真言密教の視点から『梵網経開題』を著し、さらなる解釈を試みました。

結論

『梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品第十』の重要性は、これらの戒律、教義、そしてその後の仏教思想に及ぼした影響にあります。この経典を通じて、菩薩の修行者たちがどのように内面的な成長を遂げ、広い慈悲の心を育んでいくべきかが示されています。

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