森一也

森一也（1915年（大正4年）4月8日 - 1998年（平成10年）2月1日）は、愛知県に生まれた日本の音楽家、評論家です。特に音楽評論家としては、懐メロに関する該博な知識と分かりやすい解説で知られました。アニメーション評論家の森卓也氏は実弟にあたります。

生い立ちと音楽への道

幼少期から詩人の西條八十の作品に深い関心を寄せ、特に童話を母親に毎晩読み聞かせてもらうほど熱中しました。旧制中学校時代には愛知県から東京へ移り、明治大学附属中学校に編入しますが、家庭の事情により一年ほどで退学しています。その後、本格的に音楽の道を志し、東京音楽学校（現在の東京藝術大学）で専門的な学びを深めました。在学中には、山田耕筸の音楽講座にも参加するなど、熱心に音楽研究に取り組んでいます。卒業後、一時的にビクターコンサートビューローに所属し、太平洋戦争中は故郷の名古屋で音楽教師として教鞭をとりました。

コロムビアでの活動と評論家としての確立

戦後、雑誌社での経験を経て、日本コロムビア株式会社の専属作曲家となります。ここで主に楽曲の作曲や編曲に携わる傍ら、音楽評論家としても頭角を現しました。特に懐かしい日本の歌に関する評論においては第一人者と称され、その活動は多岐にわたります。NHKの音楽番組やレコードの解説書などで、専門的な内容を初心者にも理解できるよう平易に解説し、多くの音楽ファンに親しまれました。彼が評論の対象としたのは、作詞家、作曲家、歌手など百数十人にも及び、特に西條八十、古賀政男、古関裕而、藤山一郎、伊藤久男といった大御所の作品や背景知識に関する解説は高い評価を得ています。

西條八十との親交とその他の業績

森氏は、長年敬愛していた西條八十とコロムビアでの仕事を通じて知り合い、厚い信頼関係を築きました。この親交は西條が亡くなるまで続いたと言われています。西條八十自身も回想録の中で森氏の才能と、自身の作品に関する深い知識を高く評価しています。音楽評論活動以外にも、森氏は日本コロムビアが企画したSPレコードの復刻盤プロジェクトにおいて多大な功績を残しました。これにより、貴重な音源が現代に伝えられることとなりました。また、様々な雑誌や同人誌にユーモアを交えた読みやすいコラムや体験談を連載し、その文章は現在でも多くの研究家や文筆家によって引用されています。晩年までNHKラジオ深夜便などのメディアに出演し、特に西條八十生誕100年の記念事業（CD全集、書籍など）には中心的な立場で貢献しました。

人物と代表的な作品

私生活では、作家・タレントの徳川夢声と親交があり、夢声が森氏の二人の息子の名付け親となったというエピソードが残されています。作曲家としての代表作には、守屋浩が歌った『有難や節』（採譜）や、東海林太郎が歌った『吹雪の国境』などがあります。これら以外にも、歌謡曲、ご当地ソング、校歌、社歌など、幅広い分野で多くの楽曲を手がけています。また、シンポ工業提供のラジオ番組「この歌あの人」では、司会を務めた時期もありました。森一也氏は、作曲家、評論家、そして SP レコードの復刻における貢献を通じて、日本の大衆音楽史に大きな足跡を残した人物です。

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