森芳雄

森芳雄：戦中戦後を駆け抜けた洋画家の軌跡

森芳雄（1908年-1997年）は、激動の時代を生きた日本の洋画家である。東京生まれの森は、慶應義塾普通部時代から絵画に傾倒し、白滝幾之助に師事。東京美術学校受験に失敗するも、佐伯祐三や前田寛治らが所属する「一九三〇年協会」洋画研究所に入り、研鑽を積んだ。

1929年には「一九三〇年協会展」で初入選を果たし、翌年には二科展にも入選。その後、パリに遊学し、1932年には権威あるサロン・ドートンヌに入選するなど、国際的な舞台でも高い評価を得た。帰国後は独立美術協会に参加し、1936年には同協会展で海南賞を受賞。さらに、自由美術協会を経て、主体美術協会の結成にも参画するなど、精力的に活動の場を広げていった。

しかし、日米開戦後は画業を中断。東宝撮影所の特別映画班に勤務し、そこで美術担当の久保一雄と友情を育む。敗戦後、東宝教育映画部の記録映画制作にも関わり、斎藤博之らとも出会う。戦災によって恵比寿の自宅と多くの作品を失うという苦境を経験しながらも、創作活動を続け、1950年代には『美術手帖』や『アトリエ』といった美術雑誌にエッセイや名画解説を執筆するなど、多方面で才能を発揮した。児童書の挿絵制作にも携わるなど、幅広い表現活動を行っていた。

1951年からは武蔵野美術学校（のちの武蔵野美術大学）で後進の指導にあたり、教授として長年にわたって多くの学生を育成した。その教育活動は、森芳雄自身の豊かな経験と深い造詣に基づいたものであったと推察される。

森芳雄の作品は、東京都美術館、三重県立美術館、いわき市立美術館などに所蔵されている。彼の画業は、激動の時代を生き抜き、常に新しい表現を探求し続けた画家としての生き様を反映している。

森芳雄の画家としての道を歩むことを許してくれたのは、養母を説得した義兄の堀内友四郎という牧師の存在があった。このエピソードは、彼の芸術家としての道を支えた人々の存在を物語っている。

晩年まで精力的に創作活動を続け、数々の画集や作品集を出版。個展やグループ展にも積極的に参加し、日本の美術界に多大な貢献をした。彼の作品は、時代を超えて多くの人々に感動を与え続けている。

森芳雄の主な経歴

1908年：東京生まれ
1929年：「一九三〇年協会展」初入選
1930年：二科展入選
1931年：パリ遊学
1932年：サロン・ドートンヌ入選
1936年：独立美術協会展 海南賞受賞
1939年：自由美術協会会員
1943年：東宝撮影所勤務
1951年：武蔵野美術学校講師
1957年：武蔵野美術大学教授
1964年：主体美術協会結成に参加
1975年：「早春」が宮内庁買上
* 1997年：死去

主な著書・画集

森芳雄は多くの画集や作品集を出版しており、彼の作品世界を多角的に理解する上で貴重な資料となっている。また、『洋画の技法 第4』といった解説書にも携わっている。これらの出版物を通して、彼は後世の画家や美術愛好家たちに大きな影響を与え続けている。

森芳雄の人生と作品は、時代の変化や困難を乗り越え、芸術を追求し続けた一人の画家の生き様を物語っている。彼の作品は、私たちに深い感動と、時代を超えた普遍的な美を届けてくれるだろう。

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