森赳

森赳（もり たけし）

森赳は、1894年（明治27年）に高知県で生まれ、1945年（昭和20年）に終戦直前の宮城事件で亡くなった日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将で、位階勲等は正四位勲一等功三級でした。

生涯

森赳は、高知県高知市で銀行員の長男として生まれました。広島陸軍地方幼年学校、中央幼年学校を経て、1916年5月に陸軍士官学校（28期）を卒業し、騎兵科の少尉に任官されました。その後、陸軍[[騎兵学校]]で学び、陸軍士官学校の教官などを務めました。1927年12月には、陸軍大学校（39期）を卒業し、エリート軍人としての道を歩み始めます。

その後、騎兵第13連隊の中隊長、参謀本部勤務、関東軍参謀などを経て、日中戦争では第1軍参謀として出征しました。帰国後は陸軍大学校の教官を務め、1941年8月には陸軍少将に進級し、太平洋戦争を迎えます。太平洋戦争中は、第6軍参謀長、憲兵司令部本部長などを歴任し、第19軍参謀長としてアンボンやジャワ島の守備を担当しました。1945年3月には陸軍中将に昇進し、参謀本部付を経て近衛第1師団長に就任し、宮城警備を担当しました。

終戦と宮城事件

1945年8月14日、日本がポツダム宣言を受諾する際、森赳は東部軍管区参謀から「承詔必謹」の方針を確認されました。その後、侍従武官長を訪問し、師団長室に戻った直後、東部軍管区司令部に集まるよう命令を受け、そこで終戦の大命を伝えられました。しかし、終戦に納得しない一部の陸軍将校らはクーデターを計画し、8月15日未明に宮城事件が勃発します。

事件当時、森赳は近衛師団司令部の師団長室で義弟の白石通教中佐と話をしていましたが、井田正孝中佐、椎崎二郎中佐、畑中健二少佐、窪田兼三少佐らが面会を強要しました。井田中佐にクーデターへの参加を求められましたが、森赳はこれを拒否したため、畑中少佐に銃撃され、さらに航空士官学校の上原重太郎大尉によって軍刀で斬殺されました。上原大尉はその後、上司である陸軍航空士官学校長の徳川好敏陸軍中将の指示により自決しました。

なお、窪田兼三少佐は白石中佐を殺害したものの、森中将には直接手を下していないことが確認されています。また、上原重太郎大尉が森師団長を斬ったのは肩であったことが判明しています。

森赳の墓所は静岡県駿東郡の冨士霊園にあります。

親族

森赳の親族には、海軍少将の伴次郎、陸軍中将の山岡重厚、陸軍中佐の白石通教がいます。いずれも義弟です。

逸話

森赳は「和尚さん」というあだ名で呼ばれていました。また、後年、森赳の息子がテレビのインタビューで「この事件（宮城事件）に関わった方に恨みはない」と語ったことが知られています。

参考文献

飯尾憲士『自決 森近衛師団長斬殺事件』（光人社NF文庫、1999年）
森下智『近衛師団参謀終戦秘史』（平成18年～21年）
森下智『川口放送所占拠事件秘史』（平成20年）
半藤一利『日本のいちばん長い日』（文芸春秋社）
『高知県人名事典 新版』（高知新聞社、1999年）

関連項目

宮城事件

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