森震太郎

森震太郎

森震太郎（もり しんたろう）は、江戸時代中期に生きた武士であり、実名は勝与（かつよ）と称しました。

生涯

震太郎は、600石を領する旗本、森忠右衛門の子として生まれました。しかし、森家は札差（ふださし：江戸時代に旗本・御家人の俸禄米を換金する業者）、盲人、浪人といった高利貸しからの借金が膨らみ、経済的に困窮していました。

安永7年（1778年）、父である忠右衛門は、この状況を苦に自害を考えるほど追い詰められていました。しかし、震太郎は父を必死に説得し、自殺を思いとどまらせました。そして、一家は苦境から逃れるため、両親と妻の4人で密かに逐電（ちくでん：主君や親元から逃げること）を決意し、縁戚関係にある人物が住職を務める唯念寺へと身を寄せました。

しかし、程なくして父と共に幕府に出頭しました。幕府は、法外な高利貸しを行っていた盲人や浪人らを厳しく取り締まる一方で、武士でありながら逐電するという行為は許されないとし、森父子にも罪があるとして、同年、森家を改易（かいえき：武士の身分と領地を没収すること）の上、追放処分としました。父は裁きの前に死去したため、震太郎のみが刑に服することとなりました。なお、妻の杉原氏は離縁され、実家に戻されています。

震太郎の生涯は、武士としての身分を持ちながらも、経済的な苦境と幕府の厳しい裁きによって、波乱に満ちたものとなりました。

参考文献

高橋精一「江戸時代の社会救済―盲人の社会と共済制度―」『大東文化大学紀要』大東文化大学、1976年。
伊原敏郎 著、河竹繁俊; 吉田暎二 編『歌舞伎年表』 4巻、岩波書店、1973年。ISBN 978-4-00-008574-8。
中山太郎『日本盲人史』パルトス社〈中山太郎歴史民俗シリーズ〉、1985年。
『寛政重修諸家譜』 8巻、高柳光寿（監修）、続群書類従完成会、1965年。ISBN 978-4-7971-0212-3。
* 『寛政重修諸家譜』 17巻、高柳光寿（監修）、続群書類従完成会、1965年。ISBN 978-4-7971-0221-5。

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