森忠右衛門

森忠右衛門

森忠右衛門（もり ちゅうえもん）は、江戸時代中期に生きた旗本です。

生涯

広敷番頭・広敷用人を務めた図司末親の三男として生まれ、姉の婿である森小三郎の養子となりました。養家である森氏は、佐伯藩主・毛利氏と同族で、毛利高政の弟・吉安を祖とする家柄です。寛保2年（1742年）に養父が亡くなると、家督を継ぎ、600石の知行を得ました。延享2年（1745年）からは小姓組として幕府に仕えました。

忠右衛門は、札差や盲人、浪人などが営む高利貸しから多額の借金をしていました。自害を考えるほど追い詰められますが、息子の勝与に諭され、思いとどまります。しかし、安永7年（1778年）閏7月30日の夜、妻、息子夫婦と共に逐電を決行しました。

一行は、忠右衛門の従兄弟が住職を務める唯念寺の領地へ逃れ、忠右衛門は菩提寺である寿蓮寺で出家し、医師として身を隠しました。しかし同時期に、幕医の須磨良川が盗賊騒ぎを起こして捕縛される事件が発生し、忠右衛門も一味ではないかと疑われることを恐れました。8月24日、忠右衛門は勝与を連れて、上役である小姓組番頭・森川俊清のもとへ出頭しました。

町奉行による取り調べの結果、忠右衛門の出奔理由が明らかになり、同時に盲人や浪人による法外な高利貸しの実態が明るみに出ました。これを受け、幕府は江戸でも指折りの富豪として知られていた鳥山検校や名護屋検校ら当道座の検校、金貸し浪人らを捕らえ、浪人は追放、検校らは当道座の座法に基づき、解官・追放・財産没収という処分が下されました。

忠右衛門は出頭後、入牢し、程なくして病死しました。彼は学問をよくし、達筆でもあったため、世間からは「学問も役に立たないものだ」と噂されたといいます。同年11月、息子の勝与が逐電の罪に問われ追放刑となり、匿った唯念寺の住持も追放、寿蓮寺の住持は闕所の上で追放となりました。義弟の図司末済は一時出仕停止となりましたが、翌年には解除されています。妻の柘植氏と勝与の妻・杉原氏は実家へ戻りました。

人物

学問に通じ、書道にも秀でていたと伝えられています。

参考文献

高橋精一「江戸時代の社会救済―盲人の社会と共済制度―」『大東文化大学紀要』大東文化大学、1976年。
頼祺一「草双紙に現れた庶民の世界像―黄表紙に見る江戸の町人意識―」『日本の社会史』 7巻、岩波書店、1987年。ISBN 978-4-00-004027-3。
伊原敏郎 著、河竹繁俊; 吉田暎二 編『歌舞伎年表』 4巻、岩波書店、1973年。ISBN 978-4-00-008574-8。
中山太郎『日本盲人史』パルトス社〈中山太郎歴史民俗シリーズ〉、1985年。
『寛政重修諸家譜』 8巻、高柳光寿（監修）、続群書類従完成会、1965年。ISBN 978-4-7971-0212-3。
『寛政重修諸家譜』 17巻、高柳光寿（監修）、続群書類従完成会、1965年。ISBN 978-4-7971-0221-5。
* 『続燕石十種』 1巻、中央公論社、1980年。

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