椋橋総社

椋橋総社：鯉の伝説と歴史が織りなす神社

大阪府豊中市庄本町に鎮座する椋橋総社は、古くから伝わる鯉の伝説と、歴史の重みを感じさせる由緒ある神社です。別名「鯉の宮」とも呼ばれ、地元住民だけでなく、近年では広島東洋カープのファンからも必勝祈願に訪れるなど、広く親しまれています。

由緒と歴史

椋橋総社は、12世紀半ばに摂関家領椋橋荘が東西に分かれた荘園の中央、庄本に鎮座しています。この地は古くから椋橋部連の居住地であり、神社は同荘の総産土神として崇められてきました。

創建は崇神天皇7年（紀元前91年）11月と伝えられており、椋橋部連の祖、伊香我色乎命が祀ったとされています。伝承によれば、素戔嗚之尊が高天原から鯉に乗って神崎川の水門を経てこの地に降り立ったことが、神社の起源とされています。

歴史を紐解くと、神功皇后が出兵前に神々をこの地に集めて祈願したという霊験あらたかな古社であったことがわかります。朝廷からの崇敬も篤く、後奈良天皇の勅願所にも定められました。武家からの崇敬も厚く、様々な寄進がなされてきました。社宝として、獅子頭や神鏡などが大切に保管されています。

しかし、戦国時代の兵乱や火災により、社殿や宝物は幾度となく焼失し、その都度再建されてきました。現在の社殿は、大正6年（1917年）4月の再建によるものです。

かつては牛頭天王社とも呼ばれ、豊島三大牛頭天王の一つとして数えられていました。また、鎌倉時代には後鳥羽上皇の寵姫亀菊の所領地であり、承久の乱の発端の地としても知られています。

鯉伝説

椋橋総社には、古くから鯉にまつわる様々な伝説が伝えられています。

一つは、素戔嗚之尊が鯉に乗ってこの地に降り立ったという創建神話です。もう一つは、行基菩薩が猪名川に橋をかける際、多くの鯉が協力して魚橋を作り、架橋を成功させたという伝説です。この伝説から、地元住民は古くから鯉を神使として崇め、食べたり殺したりすることを禁じてきました。境内には、力尽きて死んだ鯉を祀る「鯉塚」も存在します。

この鯉伝説は、椋橋総社だけでなく、旧猪名川を挟んで対岸にある治田寺にも伝わっており、地域全体で共有されてきた信仰の一端を垣間見ることができます。秋祭りでは、氏子中の法被に鯉が描かれているなど、現在でも鯉は神社のシンボルとして大切にされています。また、かつて氏子地区であった尼崎市東部（西椋橋荘）の神社にも、鯉がモチーフとして見られることから、かつての氏子地域全体で鯉伝説が共有されていたことがわかります。

椋橋城と推定地

椋橋城の推定地は、椋橋総社周辺とする説と治田寺周辺とする説があり、確定には至っていません。文献上の初見は文明2年（1470年）ですが、応仁の乱以前から存在したと考えられており、多田源氏四十八砦の一つとも伝えられています。織田信長の荒木村重攻めの際にも、椋橋城は織田軍の砦の一つとして使われた記録が残されています。

境内と祭事

境内には、本殿、拝殿のほか、出世亀菊天満宮、恵比須神社、三社神社、稲荷社、鯉塚、縁結びの木、鯉池などがあります。境内から南へ200m離れた場所には鳥居があり、その参道は「馬場先」と呼ばれています。

主な祭礼は、歳旦祭、恵比寿祭、春祭、夏祭、例祭（秋季大祭）などです。特に例祭では、氏子地区の太鼓が勇壮に練り歩きます。少なくとも約200年前から続く伝統で、太鼓台には享和年間（1803年）の年号が確認できるものもあります。

アクセス

阪急神戸本線神崎川駅、阪急宝塚本線庄内駅、または阪急バス、阪神バスを利用できます。

最後に

椋橋総社は、鯉の伝説、歴史、そして地域の人々の信仰が深く根付いた神社です。静かな住宅街に佇むその姿は、古の息吹を感じさせ、訪れる人にやすらぎを与えてくれるでしょう。

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