神鏡

神鏡とは

神鏡（しんきょう）とは、神道の祭祀において用いられる神聖な鏡を指す言葉です。一般的には、神霊の依代（よりしろ）として神社に祀られており、本殿に安置される場合もあれば、拝殿の神前に置かれることもあります。また、三種の神器の一つである八咫鏡（やたのかがみ）も神鏡の一種です。

神鏡の意義

神鏡は、一般的に太陽を象徴すると考えられています。鏡が太陽光を反射する様子が、太陽そのものの輝きを連想させるためです。日本神道では、太陽神である天照大神（アマテラスオオミカミ）を最高神として崇拝しており、太陽を象徴する鏡を御神体として神社に祀るようになりました。

『日本書紀』には、天照大神が孫である瓊瓊杵尊（ニニギノミコト）に「この鏡を私の御魂として、常に敬いなさい」と告げたという記述があります。このことから、神鏡は神の魂が宿る依代として、非常に重要な意味を持つことがわかります。

また、神鏡を乗せる台は、通常雲の形をしており、これは雲形台（うんけいだい）と呼ばれています。

神鏡の歴史

神鏡の発祥は、中国に遡るとされています。中国では、日本以上に多数の古代神鏡が出土しており、その歴史は非常に古いものです。日本最古の神鏡とされる「青龍三年銘方格規矩四神鏡（せいりゅうさんねんめいほうかくきくししんきょう）」は西暦235年頃のものとされていますが、中国で最古の神鏡とされる「葉脈文鏡（ようみゃくもんきょう）」は紀元前1600年～770年頃のものとされており、その歴史の深さがうかがえます。

また、『魏志倭人伝』には、邪馬台国の女王・卑弥呼が魏に使いを送り、魏から銅鏡百枚を賜ったという記述があります。このことから、日本の神鏡文化は、中国からの文化輸入であると考えられています。

朝鮮半島においても、神鏡は多数出土しています。

兵庫県井石神社の神鏡は、新羅から帰化した天日槍（アメノヒボコ）が伝えたと伝えられています。一方、宮内省は、1895年（明治28年）以降に創立された官国幣社に対し、御霊代（みたましろ）を神鏡とするよう通達しました。

神鏡の種類

神鏡には、様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

葉脈文鏡（ようみゃくもんきょう）
中国の殷（いん）・周代に作られた、世界最古の神鏡です。銅鏡には、葉脈文や平行線文などの幾何学文様が見られます。現在までに21面しか発見されていません。

素面鏡（そめんきょう）
春秋戦国時代に作られた神鏡です。外見は素朴で平板ですが、薄くて軽いのが特徴です。

蟠龍菱文鏡（はんりゅうひしもんきょう）
前漢前期に作られた神鏡で、とぐろを巻く龍や蛇の図案が彫られています。

方格規矩四神鏡（ほうかくきくししんきょう）
後漢時代に作られた神鏡で、中央に方形の線が彫られ、それぞれの区画に青龍・白虎・朱雀・玄武の四神の文様が配置されています。

神仙画像鏡（しんせんがぞうきょう）
後漢時代に作られた神鏡で、神仙である南極老人、天皇大帝、東王父、西王母などが彫られています。

青龍三年銘方格規矩四神鏡（せいりゅうさんねんめいほうかくきくししんきょう）
日本最古の神鏡とされています。銘にある「青龍3年」が、中国の魏の年号で西暦235年にあたることから、邪馬台国の卑弥呼が魏に遣いを送った際に持ち帰られた可能性があると指摘されています。

漢龍虎鏡（かんりゅうこきょう）
後漢晩期に作られた神鏡で、中央に龍と虎の文様が睨み合っているのが特徴です。

三角縁神獣鏡（さんかくえんしんじゅうきょう）
断面が三角形で、神獣の文様が刻まれている青銅製の鏡です。日本でのみ出土しますが、神獣鏡自体は中国や朝鮮でも多く出土しています。三角縁である点が日本固有の特徴です。日本で作られたものなのか、中国で作られたものなのかは、はっきりとは分かっていません。

御霊代神鏡（みたましろしんきょう）
神社や宮中では、神鏡を御霊代とすることが多く、規定では「天神地祇並びに天皇はその鏡径を一尺、諸臣は七寸とし、裏面に神名を刻し、鈕に紅紐をかけ、錦の袋に入れ、柳箱に納め、この箱を入帷子に包み、唐櫃に納め、ここに覆いをかけるか、御衾で包む。なお、唐櫃を使用せず、神鏡を絹で包み、御樋代に、次に御船代に納め、御衾で覆うも可」とされています。

参考文献

『宇佐八幡と古代神鏡の謎』(著者：田村円澄、木村晴彦・桃坂豊　版：戎光祥出版)

外部リンク

* 神鏡美術館

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