検察者

『検察者』は、小杉健治による日本の小説で、1992年に『小説すばる』で連載されました。この作品は、日本の小説として初めて検察審査会を題材に取り上げたことで知られています。

概要

本作は、1990年に発生した御巣鷹山の日航ジャンボ機墜落事故を契機に、作者が検察審査会の活動に関心を抱いたことから生まれました。当時、検察審査会は社会的に注目を集めていましたが、その議決に法的拘束力がなかったため、小説の題材としては扱われにくいとされていました。しかし、2009年の法改正により、検察審査会が二度「起訴相当」と議決した場合、法的拘束力が生じることとなり、その後の小説やドラマに影響を与えました。

あらすじ

物語は、二つの異なる事件が並行して進行します。一つは、会社員が管理者研修中の事故で死亡した事件。警察は、この事件を厳しい研修による集団暴行事件と見て捜査を開始しますが、担当検察官は関係者を不起訴とします。しかし、この不起訴処分に対し、検察審査会での審議が開始されることになります。

もう一つは、都内で発生した自殺偽装殺人事件。警察は容疑者を特定し自白を引き出しますが、検察官の桐生は事件に違和感を覚えます。

一見関連性のない二つの事件が、物語が進むにつれて思わぬ繋がりを見せていく展開が見どころです。

登場人物

司法関係者

桐生賢太郎（きりゅうけんたろう）：東京地検の検事。33歳。二枚目で、名家の出身。有罪の確信がない限り起訴しない主義だが、女性に甘い一面も。
正岡（まさおか）：東京地検のベテラン検事。桐生と過去に同僚だった。出世のために、しごき事件の不起訴を決定する。
笠置（かさぎ）：桐生の事務官。離婚歴がある。
坂下（さかした）：東京地検の検事正。
兵藤直介（ひょうどうなおすけ）：東京地検の検事。辣腕で知られ、しごき事件を担当。
横道（よこみち）：坂下の後任の検事正。清廉潔白。
水木邦夫（みずきくにお）：弁護士。桐生のライバルと目される人物。自殺偽装事件で西田の弁護を担当。

検察審査会

11名のメンバーで構成され、半数が3ヶ月ごとに改選される。本作では、以下のメンバーが物語に深く関わります。

有藤和樹（ありとうかずき）：サラリーマン。審査員に選ばれたことで、仕事から外され憤りを感じる。
湯川珠美（ゆかわたまみ）：元小学校教師で、塾講師。不倫と流産を経験。青野という男から、しごき事件の職権審査を依頼される。
岩田松一（いわたまついち）：自称画家。審査中も似顔絵を描いている。
田代順次（たしろじゅんじ）：ルポライター。職権審査に執着し、起訴相当の判断を促そうとする。
河合秀代（かわいひでよ）：主婦。
加茂咲子（かもさきこ）：OL。
大宮勝一郎（おおやみしょういちろう）：化粧品店主。最年長のため議長を務める。
白川秀昭（しらかわひであき）：学生。
沢田五郎（さわだごろう）：営業マン。
柳川昌美（やながわまさみ）：公務員。
米山春子（よねやまはるこ）：店員。

警察関係者

河原崎（かわらざき）：警視庁の刑事。通称「鬼ガワラ」。検事を採点する癖がある。

社員研修しごき死亡事件の関係者

敷島宗一（しきしまそういち）：山陽工業の社員。研修中に怪我で死亡。
敷島充子（しきしまみつこ）：宗一の妻。宗一の親友と不倫関係にある。
田所（たどころ）：宗一の上司。
岸田亨（きしだとおる）：充子の不倫相手で、宗一の友人。
津加田幸平（つかだこうへい）：研修の教官。敷島をしごいたとされる。
飯田一男（いいだかずお）：研修の教官。
合田浩（ごうだひろし）：研修の参加者。事件後に手記を発表。
稲葉三郎（いなばさぶろう）：研修の参加者。
秋本信秀（あきもとのぶひで）：医師。
鷲尾毅（わしおつよし）：研修塾の塾長。
村木（むらき）：鷲尾塾のオーナー。

自殺偽装殺害事件の関係者

渡部仁史（わたべひとし）：大東製作所社員。ベランダから首吊り自殺に見せかけ殺害される。
西田保（にしだたもつ）：西田製作所経営者。渡部殺害の容疑者。
磯野貞治（いそのていじ）：バーテンダー。渡部の下の階に住む。
松下守（まつしたまもる）：大東製作所社員。事件の目撃者。
井口一男（いぐちかずお）：大東製作所社員。事件の目撃者。
吉池まみ子（よしいけまみこ）：渡部の愛人。水商売。

その他

青野（あおの）：自称弁護士。湯川に近づき、しごき事件の職権審査を依頼する。
城田牧子（しろたまきこ）：画廊オーナー。
安西亜利奈（あんざいありな）：社長秘書。
多々野明（たたのあきら）：珠美の元同僚。不倫相手。
相原静（あいはらしずか）：外交官の娘。

検察者

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