楊炎

楊炎（よう えん）

楊炎（727年 - 781年）は、中国唐代の政治家であり、両税法の創設者として歴史に名を刻んでいます。字は公南、号は小楊山人と称し、諡は粛愍です。鳳翔府天興県の出身です。

生涯

若き日の楊炎は、河西節度使の呂崇賁に仕え、その文才を発揮しました。その後、中央政府に入り、同郷の宰相であった元載の信任を得て、司勲員外郎、礼部郎中、中書舎人、吏部侍郎、史館修撰などの要職を歴任しました。しかし、元載が失脚すると、楊炎も連座して道州司馬に左遷されるという苦難を経験します。

両税法の導入

大暦14年（779年）、徳宗が皇帝に即位すると、楊炎はその才能を見出され、崔祐甫の推薦によって宰相職である門下侍郎・同中書門下平章事に抜擢されました。当時の唐は、安史の乱以降、地方の節度使が藩鎮として事実上の独立政権を打ち立て、国家は分裂状態にありました。さらに、農村の荒廃も重なり、国家財政は深刻な危機に瀕していました。

こうした状況を打開するため、楊炎は建中元年（780年）に、塩の専売制を成功させて財政を掌握していた劉晏を処刑し、実権を握ります。そして、陸贄らの反対を押し切りながらも、両税法を導入しました。この税制改革は、それまでの複雑な税制を簡素化し、より公平な税負担を目指すものでした。さらに、財政収入が宦官に流用されることを防ぎ、国家財政を扱う戸部の左蔵庫を充実させるなど、財政再建に尽力しました。また、沈既済や杜佑といった有能な人材を積極的に登用し、その名声を高めました。

失脚と最期

しかし、楊炎の改革は、税負担の増加を嫌う貴族、財政の権限を奪われた宦官、そして自身の勢力削減に危機感を抱いた藩鎮など、多くの反発を招きました。徳宗の側近であった盧杞は、楊炎に対する讒言を繰り返し、反対勢力もこれに同調しました。さらに、楊炎が劉晏の処刑を正当化するために、劉晏が徳宗の異母弟である韓王李迥を擁立しようとしていたという噂を流したことが、徳宗の不信感を招きます。李迥を信任していた徳宗は、楊炎が兄弟の仲を引き裂こうとしていると不快感を抱き始めました（『資治通鑑』）。

その結果、両税法実施の翌年である建中2年（781年）、楊炎は海南島の崖州司馬に左遷されることになります。しかし、その道中で処刑され、その波乱に満ちた生涯を閉じました。

楊炎の評価

楊炎は、その革新的な政策によって唐の財政再建に大きく貢献しましたが、同時に多くの敵を作り、最終的には悲劇的な最期を遂げました。しかし、彼の創設した両税法は、後の税制改革にも影響を与え、その功績は歴史に深く刻まれています。

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