楊継盛

楊継盛（よう けいせい）は、明代の官僚であり、字は仲芳（ちゅうほう）、号は椒山（しょうざん）と称しました。諡は忠愍（ちゅうびん）と贈られています。1516年に保定府容城県（現在の河北省容城県）で生まれ、1555年に処刑され、その生涯を閉じました。

彼は、貧しいながらも学問に励み、特に天文、地理、兵学に精通していました。音楽にも長けていたと伝えられています。1547年には進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。兵部員外郎の職にあった時、北方民族のアルタン・ハーンが侵入した際、平虜大将軍であり咸寧侯であった仇鸞（きゅうらん）の弱腰な対応を厳しく批判しました。このことが原因で、彼は罪を得てしまいます。しかし、その才能を惜しまれ、後に刑部員外郎、そして兵部武選司に復帰します。

しかし、楊継盛の正義感は、当時の権力者であった大学士の厳嵩（げんすう）の専権を見過ごすことができませんでした。彼は厳嵩の十の罪と五つの奸計を暴き、その不正を徹底的に糾弾しました。しかし、その結果、彼は逆に厳嵩によって死罪を宣告され、晒し者になるという悲劇的な最期を迎えました。彼の死は、当時の民衆に深い悲しみを与えたとされています。

死を前に、楊継盛は子供たちに2首の詩を残しました。それは、10年後に開封するように指示されており、彼の深い想いが込められています。

「浩気還太虚、丹心照千古、生前未了時、事留与後人」（浩然たる気は太虚に還り、丹心は千古を照らす。生前に成し遂げられなかったことは、後世の人に託す。）
「天王自聖明、制度高千古、生平未報恩、留作忠魂補」（天王は自ずから聖明であり、制度は千古に高い。生涯報いることができなかった恩は、忠魂として補う。）

これらの詩は、彼の生涯を通した高潔な精神と、国と民への深い愛情を表しています。彼の死から7年後、隆慶帝は楊継盛の直諫の功を認め、太常寺少卿の位を追贈しました。彼の勇気と忠誠心は、後世の人々から尊敬を集め、彼の品行を重んじた人々によって『楊忠愍集』全3巻が編纂されました。

楊継盛は、その短い生涯の中で、権力に屈することなく正義を貫き、不正を糾弾した勇気ある官僚として、歴史に名を刻みました。彼の生き様は、今日においても多くの人々に感銘を与え、語り継がれています。

もう一度検索