楊鎬

楊鎬（よう こう）

楊鎬（生年不詳 - 1629年）は、中国明代末期の官僚です。彼は、その生涯において、二度にわたる重要な戦役で指揮官を務めましたが、いずれも敗北を喫し、最終的には処刑されるという悲劇的な結末を迎えました。

科挙合格と朝鮮派遣

1580年、楊鎬は科挙に合格し進士となります。その後、彼は官僚としてのキャリアを積みますが、その名前が歴史に大きく刻まれることになるのは、第二次万暦朝鮮の役（慶長の役）での出来事でした。この戦役において、彼は経略朝鮮軍務、すなわち朝鮮に派遣された明軍の総司令官に任じられます。

1597年末、楊鎬は推定4〜7万の大軍を率いて朝鮮半島に南下しました。彼の目的は、日本軍を朝鮮半島から駆逐することでしたが、その戦いは困難を極めました。蔚山城の戦いでは、加藤清正率いる日本軍と激戦を繰り広げましたが、結果として明軍は敗北しました。しかし、この敗北を隠蔽するため、楊鎬は朝廷に勝利の虚偽報告を行ったとされています。この虚偽報告が発覚し、彼は解任されることとなりました。

遼東巡撫とサルフの戦い

解任後、楊鎬は再び官職に復帰し、遼東巡撫に任命されました。遼東は、明朝にとって重要な防衛拠点であり、その地での任務は非常に重要でした。

1619年、明からの独立を宣言した後金（後の清）を討伐するため、楊鎬は遼東経略として再び軍の指揮を執ることになりました。彼は、ヌルハチ率いる後金軍に対抗するため、明軍を四つの軍団に分けて進軍させました。しかし、この戦略はヌルハチに見抜かれており、各個撃破されてしまいます。サルフの戦いにおけるこの大敗北は、明朝にとって深刻な打撃となり、楊鎬は敗戦の責任を問われ投獄されました。

最期

サルフの戦いでの大敗後、楊鎬は捕らえられ、厳しい監禁生活を送ります。そして、1629年、彼は処刑されることとなりました。かつて大軍を率いた将軍の悲劇的な末路は、明朝の衰退を象徴する出来事の一つとして後世に語り継がれています。


楊鎬は、二度にわたる重要な戦役で指揮官を務めながら、いずれも敗北を喫するという不運な人物でした。彼の人生は、明朝末期の混乱と衰退を反映しており、その経験は、歴史における戦略の重要性と、為政者の責任の重さを教えてくれます。

参考文献

* 「明史　巻259／列伝147」[1]

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