蔚山城の戦い

蔚山城の戦い：慶長の役における激戦

蔚山城の戦い（ウルサンソンのたたかい、いさんじょうのたたかい）は、慶長の役における重要な戦いの一つです。1598年1月29日から2月9日（慶長2年12月22日～慶長3年1月4日）にかけてと、同年8月から10月にかけて、明・朝鮮連合軍と日本軍の間で二度にわたり激しい攻防が繰り広げられました。

第一次蔚山城の戦い（1598年1月）

背景

文禄の役後、日明間の和平交渉が決裂し、豊臣秀吉による再征が決定されました。日本軍は全羅道・忠清道を制圧後、朝鮮半島南岸に新たな倭城群を築城することになります。その最東端に位置する蔚山には、加藤清正自らが縄張りを行い、毛利秀元・浅野幸長らの軍勢を動員して蔚山倭城の築城を開始しました。明・朝鮮連合軍は、加藤清正を日本軍最強の武将とみなし、蔚山を攻略することで日本軍全体の士気を低下させようと考えました。楊鎬・麻貴率いる明軍と、都元帥権慄率いる朝鮮軍、総勢約5万7千の兵力を蔚山に差し向けました。

蔚山襲撃と籠城戦

蔚山倭城が完成間近の頃、毛利秀元は兵糧・武具を釜山へ輸送し、帰国の準備に入っていました。加藤清正も西生浦へ出張しており、城には浅野幸長らが駐屯していました。12月22日、明軍の奇襲により日本軍は大きな損害を受け、浅野幸長らは蔚山城に撤退し、籠城戦を開始しました。

攻防戦

加藤清正は急遽蔚山へ戻り、籠城軍の指揮を執りました。明・朝鮮連合軍は連日、蔚山城を攻撃しましたが、日本軍の激しい抵抗により多くの死傷者を出し、攻略は困難を極めました。しかし、城の完成直後で兵糧の備蓄が十分でなかったため、日本軍は厳しい籠城戦を強いられました。寒さや飢えで倒れる者が続出し、落城は時間の問題と思われました。

援軍到来と明・朝鮮軍の撤退

日本の援軍が続々と西生浦に到着したとの知らせを受け、明・朝鮮連合軍は退路を断たれることを恐れました。1月4日、楊鎬・麻貴は慶州への撤退を開始しました。日本軍は吉川広家や立花宗茂らの部隊が追撃し、明軍に大打撃を与えました。中国側の史料によれば、この戦いで明軍は2万人の戦死者を出す大損害を被ったとされています。

第二次蔚山城の戦い（1598年8月）

再び蔚山へ

第一次蔚山城の戦いの後、明軍は本国からの増援を得て兵力を約10万に増強しました。慶長3年（1598年）8月、明・朝鮮連合軍は再び蔚山を攻撃しました。今度は加藤清正が守備を固めており、明軍は城を攻略することができませんでした。挑発などを行って日本軍を誘きだそうとしましたが、清正は徹底して守りを固めました。泗川の戦いでの敗北の報告も届き、明軍は10月6日に蔚山倭城からの撤退を余儀なくされました。

戦後

豊臣秀吉の死後、日本軍は撤退命令を受け、加藤清正は11月18日に蔚山倭城から撤退しました。麻貴は日本軍撤退後の蔚山倭城を接収し、自らの戦功として報告しました。

関ヶ原への影響

蔚山城の戦いは、その後の関ヶ原の戦いにも影響を与えました。蔚山救援の功を賞されなかった蜂須賀家政や黒田長政らが徳川家康に接近し、東軍につくことになったり、加藤清正らが石田三成への反感を募らせ、「七将」と呼ばれる反・石田三成勢力が結成されるきっかけになったりしました。

現在

熊本市中央区には「蔚山町」という地名が残っています。これは、加藤清正が蔚山から連れてきた人々を住まわせたことに由来すると言われています。

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