楠本高子

楠本高子（くすもと たかこ）は、1852年2月26日に長崎で生まれた女性です。彼女は、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの孫娘であり、母は日本初の女医である楠本イネです。結婚後の改姓により、三瀬高子、山脇高子とも呼ばれました。

生い立ちと幼少期

高子は、楠本イネと石井宗謙の間に生まれた私生児でした。そのため、母イネからは「タダ子」と名付けられました。幼少期は、長崎で祖母のお滝に育てられ、琴や三味線、舞などの芸事に熱心でした。当初、母イネは高子に医者の道を継がせたいと考えていましたが、高子の芸事への熱心さに嘆いていたといいます。初恋は檜野家の藩士、丹治太でした。

結婚と転機

1865年、高子は母の師である二宮敬作の縁で、宇和島藩の奥女中として奉公を始めました。翌1866年には、シーボルトの門下医であり、二宮敬作の甥にあたる三瀬諸淵と結婚します。しかし、1877年に夫の三瀬に先立たれます。その後、異母兄の石井信義の元で産婦人科を学びました。修行中に医師の片桐重明との間に男児を設けますが、このことが原因で医業の道を断念したという説があります。その後、以前から高子に求婚していた医師の山脇泰助と再婚。一男二女を授かりますが、結婚7年目に山脇も病死しました。以降は、叔父のハインリヒ・フォン・シーボルトの世話を受け、母イネと共に東京で暮らします。晩年は、幼少期に熱心だった芸事の教授で生計を立てました。

親族

高子には、2男2女がいました。最初の夫、三瀬諸淵との間には子供はいません。長男の楠本周三は、東京慈恵医院医学専門学校で学び医師となりました。再婚した山脇泰輔との間には、次男の初、長女の滝、次女のタネがいます。次男の初は生後8ヶ月で夭折しています。長女の滝は既婚で40歳頃に亡くなりました。次女のタネは、米山家に嫁ぎ105歳まで生きました。タネの孫にはサンチェス聖子がおり、楠本周三の息子には楠本周篤がいます。さらに、楠本周篤の妹の孫には医師でファウストボール選手の堀内和一朗がいます。

伝記小説と高子を演じた人物

高子を題材にした伝記小説には、宇神幸男の『幕末の女医楠本イネ　シーボルトの娘と家族の肖像』や、吉村昭の『ふぉん・しいほるとの娘』があります。また、1977年のNHK大河ドラマ『花神』では、竹井みどりが高子を演じました。

その他

漫画家の松本零士は、高子の肖像写真を見て、自身の作品に登場する女性キャラクターのイメージに衝撃を受けたと語っています。高子の日本での子孫は、楠本家、堀内家、米山家などです。

資料については、叔父のハインリヒ・フォン・シーボルトの子孫である関口忠志が設立した日本シーボルト協会、シーボルト記念館、イネの恩師である二宮敬作の出身地である愛媛県西予市の資料館などが研究を進めています。

評論家の羽仁説子は、晩年の高子に会い、話を聞いています。当時、高子は次女の米山種のもとに同居しており、羽仁は高子を訪問しています。その時の話をもとに、羽仁は『シーボルトの娘たち』を著しました。

高子は、激動の時代を生きながらも、その生涯を通じて強く生きた女性でした。その波乱万丈な人生は、多くの人々に感動を与え、今もなお、多くの研究者や作家たちの関心を集め続けています。

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