極道シリーズ

極道シリーズ：若山富三郎が新たな任侠映画の道を切り開く

1968年から1974年にかけて、東映で若山富三郎主演により製作された任侠映画シリーズ「極道シリーズ」。全11作品からなるこのシリーズは、従来の任侠映画とは一線を画す、独特の雰囲気と魅力で人気を博しました。若山富三郎の代表作として、東映任侠映画の歴史に大きな足跡を残した作品群と言えるでしょう。

若山富三郎と極道シリーズ誕生の背景

若山富三郎は、新東宝時代から主演スターとして活躍していましたが、その後は所属を転々とする中で脇役に回ることも多く、弟である勝新太郎の影に隠れる時期が続きました。1966年に東映へ移籍後も、当初は脇役や悪役が中心でした。しかし、1968年の『博奕打ち 総長賭博』で、鶴田浩二とは異なる独特の存在感を示し、プロデューサーの俊藤浩滋の目に留まります。

俊藤は、大阪釜ヶ崎の愚連隊を思わせる人物像を構想し、岡田茂東映常務に提案。これが「極道シリーズ」の企画へと発展しました。当初のイメージは釜ヶ崎の愚連隊の男でしたが、脚本の松本功が石川力夫の話を参考に、最終的には『仁義の墓場』の主人公をモデルとした親分像が完成しました。

若山自身は、自身の周りの人物やマキノ雅弘からのアドバイスを参考に、山高帽にダボシャツ、腹巻き、ステテコ姿に雪駄履きという個性的なスタイルで熱演。長らく低迷していた若山は、このシリーズで主演スターの座を獲得し、鶴田浩二や高倉健と並ぶ東映任侠映画の顔となりました。

シリーズの特徴と魅力

「極道シリーズ」は、毎回、若山富三郎演じる島村清吉が、悪徳ヤクザと戦う勧善懲悪の物語です。初期の作品はシリアスな路線でしたが、回を重ねるごとにコミカルな要素が増え、独特のユーモラスな展開へと変化していきました。しかし、島村の正義感や勧善懲悪という基本的な要素は最後まで貫かれています。

シリーズには連続性が曖昧な部分があり、一度死んだはずの人物が次の作品で登場したり、時間軸も前後したりするなど、独特の構成が特徴です。また、若山富三郎の迫力のあるアクションシーンも見どころの一つ。マジ殴り、フルコンタクトに近い演技は、共演者たちに怪我の危険をもたらしたと伝えられています。

主要登場人物

島村清吉（若山富三郎）： 大阪釜ヶ崎を縄張りに持つ島村組の組長。「釜ヶ崎のカポネ」の異名を持つ短気な男だが、義理人情に厚く、子分思いな一面も。
菅原文太、大木実： 作品ごとに名前や設定は異なりますが、島村の参謀格や、島村と肩を並べる組長役として出演。
島村みね子（清川虹子）： 島村の妻。男勝りだが、夫を心配する一面も。
ジョージ（山城新伍）： 島村の子分。サングラスがトレードマーク。島村の通訳や解説役として活躍。
岩田照男（潮健児）、栗原修（待田京介）、パク（関山耕司）： 島村の子分たち。それぞれ異なる個性と役割を持つ。
神坂謙次（渡瀬恒彦）： 第11作「極道VS不良番長」に登場。「不良番長シリーズ」とのクロスオーバー作品で、暴走族のリーダー役。

若山一家とシリーズの成功

撮影中だけでなく、プライベートでも若山富三郎を親分と慕う俳優たちが「若山一家」を結成。若山自身の親分肌な性格も相まって、物語と現実の境界が曖昧になっていく様子も見られました。

「極道シリーズ」は、従来の任侠映画とは異なる独自のスタイルと、若山富三郎の圧倒的な存在感によって、大きな成功を収めました。低迷していた若山富三郎と菅原文太をスターダムに押し上げ、東映任侠映画に新たな活気を吹き込んだ、重要な作品群と言えるでしょう。 多くのファンを魅了し、現在でも語り継がれる名作シリーズです。そして、1997年には、島村清吉の息子を主人公とするVシネマ作品『極道の血 いわしたれ！』が制作されています。

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