樊城の戦い

樊城の戦い

樊城の戦いは、後漢末期の建安24年（219年）に、劉備配下の関羽が曹操軍と孫権軍を相手に繰り広げた戦いです。この戦いは、三国時代の勢力図を大きく変える転換点となりました。

戦いの背景

建安23年末、曹操の支配下にあった南陽郡で、太守の過酷な賦役に不満を持った侯音が関羽と通じて反乱を起こしました。この反乱は鎮圧されたものの、曹操軍の動揺を招きました。また、陸渾でも民衆が反乱を起こし、関羽に呼応するなど、曹操領内では関羽の影響力が増していました。

定軍山の戦いで曹操に勝利した劉備は漢中王を称し、関羽を前将軍に任命。荊州の軍権を与えました。これを受け、関羽は建安24年7月、息子の関平や配下の趙累らと共に、襄陽と樊城の攻略を開始します。

戦いの経過

樊城は曹仁、襄陽は呂常が守っていましたが、曹操は于禁率いる七軍を援軍として派遣。龐徳を遊軍として関羽に対抗させました。しかし、長雨による漢水の氾濫で七軍は水没し、于禁は降伏。龐徳は最後まで抵抗しましたが、捕らえられて処刑されました。この結果、関羽の勢いは増し、荊州刺史の胡修や南郷太守の傅方らを降伏させ、曹操領内の群盗も呼応して蜂起するなど、中原を震動させました。樊城は孤立無援の状態に陥り、曹操は遷都を考えるほど動揺しました。

しかし、曹操の参謀である司馬懿と蔣済は、孫権に関羽の背後を突かせることを進言。曹操はこれに従い、孫権に関羽討伐を密かに依頼しました。孫権も、かねてから関羽との関係が悪化していたことや、呂蒙の進言もあり、この提案を受け入れます。呂蒙らは秘密裏に兵を進め、関羽に反感を抱いていた糜芳と士仁を寝返らせ、関羽の支配下にあった荊州南郡を制圧しました。

樊城では、長雨で城壁が水没し、食糧も尽きかけていました。曹仁は撤退を検討しますが、満寵の反対を受け、持ちこたえる決意をします。曹操は、于禁軍の壊滅を受けて、新たに趙儼と徐晃を樊城へ派遣。徐晃は、援軍を待ちつつ地下道で曹仁と連絡を取り合い、徐商と呂建らの援軍を得て攻勢に転じます。徐晃は偃城を無血で確保し、その後も曹操からの援軍を得て関羽軍を押し返します。関羽は囲頭や四冢に屯営を置いていましたが、徐晃は四冢を攻撃目標に定め、油断していた四冢を急襲。関羽は自ら五千の兵を率いて徐晃に野戦を挑みますが、大軍となった徐晃軍に敗れました。関羽は樊城からの撤退を余儀なくされました。

関羽の最期

樊城から撤退した関羽は、江陵と公安が孫権に奪われたことを知り、益州への退却を図ります。しかし、孫権は潘璋と朱然に関羽の退路を遮断させ、関羽は臨沮で関平と共に捕らえられました。孫権は関羽を劉備と曹操の対立に利用しようと考えましたが、左右の者の諫言を聞き入れ、関羽を斬首しました。関羽の首は曹操の下へ送られ、曹操は諸侯の礼をもって関羽の首を洛陽に葬りました。また、孫権は関羽の遺体を諸侯の礼をもって当陽に葬りました。

戦後の影響

樊城・襄陽の危機が解除された曹操は、孫権を荊州牧に任命し、荊州南部の支配を認めました。一方、荊州を失った劉備は、領土・兵力・人民・物資を失い、多くの人材を失いました。222年、劉備は関羽の弔いと荊州奪還のため、自ら呉に侵攻しますが、陸遜の計略により大敗を喫し、荊州を完全に失いました。この敗北により、諸葛亮が劉備に示した「天下三分の計」は頓挫することになりました。

関羽に捕らえられた于禁は、後に帰国するも曹丕に恥をかかされ憤死し、関羽に斬られた龐徳の遺児である龐会は、蜀漢滅亡後に関羽の子孫を皆殺しにすることで復讐を果たしました。

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