樋口隆一

樋口隆一：音楽への情熱と探求

樋口隆一（ひぐち りゅういち、1946年4月9日生まれ）は、日本の音楽学者、指揮者であり、明治学院大学の名誉教授です。彼は、音楽学の分野で卓越した業績を上げ、特にバッハ研究における第一人者として広く知られています。哲学博士（エバーハルト・カール大学テュービンゲン）の学位を持ち、国際音楽学会の副会長や日本選出理事、音楽文献目録委員会の委員長など、数々の要職を歴任してきました。また、日本アルバンベルク協会の常任理事やDAAD友の会元会長としても活動しました。

生い立ちと学歴

樋口隆一は東京で生まれました。彼の家系は著名で、祖父は陸軍中将の樋口季一郎、叔父は作曲家の乾春男です。麻布高校を卒業後、慶應義塾大学文学部で学び、同大学院の修士課程を修了しました。作曲理論を池辺晋一郎に師事し、その後、ドイツ学術交流会（DAAD）の奨学生として西ドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲン（テュービンゲン大学）に留学しました。留学中、音楽学をゲオルク・フォン・ダーデルセンに、指揮法をアレクサンダー・スムスキーに師事し、1979年に「教会カンタータに関する研究」で哲学博士の学位を取得しました。さらに、シュトゥットガルト聖マリア教会代理合唱長やゲッティンゲン・バッハ研究所客員研究員も務めました。

研究と教育活動

帰国後、樋口隆一は明治学院大学で教鞭を執り、文学部芸術学科の助教授、教授、そして文学部長を歴任しました。2015年に退任し、名誉教授となりました。明治学院大学では、バッハとシェーンベルクを中心とする西洋音楽史を講じました。その講義は、西洋音楽に対する学生たちの理解を深める上で重要な役割を果たしました。教育者として多くの学生を育て、音楽界に貢献したことは特筆に値します。

指揮者、音楽評論家としての活動

樋口隆一は、指揮者、音楽評論家としても活発に活動しています。彼の指揮は、楽曲の深い理解と豊かな表現力に裏打ちされており、多くの聴衆を魅了してきました。また、音楽評論家としては、鋭い視点と深い知識に基づいた評論を展開し、音楽界に大きな影響を与えています。1988年には京都音楽賞、1989年には辻荘一賞を受賞しています。

バッハ研究とアカデミー創設

樋口隆一は、バッハ研究の第一人者として、数多くの著書や論文を発表してきました。彼のバッハ研究は、原典に忠実でありながら、独自の解釈を加えることで、新たな視点を提供しています。2000年には、明治学院バッハ・アカデミーを創設し、芸術監督に就任しました。このアカデミーは、バッハの音楽を研究し、演奏する場として、国内外から高い評価を受けています。

受賞と栄誉

2002年には、オーストリア学術芸術功労十字章が授与されました。2023年からは国際音楽資料情報協会（IAML）日本支部長を務めています。これらの受賞や役職は、彼の音楽研究と教育への貢献が国際的に認められていることの証です。

主要な著書

『ミューズの道草』春秋社、1983
『バッハ　カラー版 作曲家の生涯』新潮文庫、1985
『原典版のはなし　作曲家と演奏家のはざまに』全音楽譜出版社、1986
『バッハ カンタータ研究』音楽之友社、1987
『ドイツ音楽歳時記　民謡とバッハのカンタータで綴る』講談社、1987
『バッハの四季　ドイツ音楽歳時記』平凡社ライブラリー、2000
『バッハ探究』春秋社、1993、新版1996
『バッハから広がる世界』春秋社、2006
『バッハの風景』小学館、2008
『バッハの人生とカンタータ』春秋社、2012
* 『バッハ学者は旅をする　私の音楽草枕』アルテスパブリッシング、2021

これらの著書は、バッハの音楽を深く理解するための貴重な資料であり、多くの音楽愛好家や研究者に愛読されています。

樋口隆一は、音楽学者、指揮者、音楽評論家として、多岐にわたる分野で活躍し、日本の音楽界に多大な貢献をしてきました。彼の情熱と探求心は、これからも多くの人々に感動と影響を与え続けるでしょう。

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