辻荘一

辻荘一（つじ しょういち）

プロフィール

辻荘一は、1895年（明治28年）に岐阜県で生まれ、1987年（昭和62年）に91歳で亡くなった日本の音楽学者です。西洋音楽史、特にキリスト教音楽史を専門とし、立教大学名誉教授を務めました。

生い立ちと学歴

東京帝国大学文学部で学び、弘田龍太郎や田村寛貞に師事しました。1920年に同大学を卒業しています。

研究者としての活動

1923年、立教大学文学部教授に就任し、キリスト教音楽史の講義を担当しました。同年には立教大学グリークラブを創設。また、週に一度、母校である東京大学文学部で非常勤講師を務め、音楽学者の皆川達夫を育てました。戦後は日本音楽学会の設立に尽力し、1964年から1970年まで第2代会長を務めました。

1960年、立教大学メサイア演奏会の開催を提唱し、皆川達夫と共に準備委員会を発足。1962年、金子登を指揮者に迎え、第1回演奏会が開催されました。このメサイア演奏会は、2021年に第60回を迎えました。1961年には、38年間勤務した立教大学を定年退職し、その後、国立音楽大学教授として教鞭をとりました。また、社会福祉法人滝乃川学園の理事長も務めました。

受賞と栄典

勲四等旭日小綬章を受章。1980年には日本キリスト教文化協会からキリスト教功労者として表彰されました。

研究内容と業績

西洋音楽、特にキリスト教音楽史の研究に尽力しました。近代日本における西洋音楽の受容と発展を背景に、その根底にあるキリスト教音楽への理解の重要性を説き、『キリスト教音楽の歴史』などの著書を執筆しました。戦前から戦後にかけて、日本音楽学会の設立に寄与するなど、日本における音楽学の発展に大きく貢献しました。

辻荘一・三浦アンナ記念学術賞

没後、その功績を記念し、優れた音楽・美術研究者を表彰する「辻荘一・三浦アンナ記念学術賞」が創設されました。1988年には、バッハ研究者の礒山雅が最初の受賞者となり、立教学院諸聖徒礼拝堂で授賞式が行われました。選考委員長は皆川達夫が務め、2018年には30周年記念行事が行われました。

家族

化学者・音楽評論家の辻啓一と、美術史家で大阪大学名誉教授の辻成史を子に持ちます。

主な著作

『ヘンデルグロリアパトリ：総譜表』編 南葵音楽図書館 1928
『日本音楽集成 第1編 雅楽 第1輯(催馬楽) 』兼常清佐共編 南葵音楽図書館 1930
『音楽講座 第16篇 宗教音楽』共著 学芸社 1933
『声楽・合唱辞典』清水脩,山本金雄共監修 カワイ楽譜 1970

主な翻訳

『音楽と詩歌との境』アムブロオス著、岩波書店 音楽叢書 1926
『音楽と詩の限界』A.W.アンブロース著、[音楽之友社] 1952
『フランツ・シユウベルト』グロウヴ著、岩波文庫 1935
『ベートーヴェン　第四交響曲 変ロ長調』解説 音楽之友社 1948
『バッハ』シュウァイツァー著、山根銀二共訳 岩波書店 1955-58
『オルガンの名曲 演奏・鑑賞の手引』V.ルーカス著、藤野薫共訳 パックスエンタープライズ 1983

参考文献

『日本人名大事典』講談社
「メモラビリア・座談と回顧：菅円吉、辻荘一、神田盾夫三先生をかこんで」『キリスト教学』12, 立教大学キリスト教学会, 1971年, 144-166頁.

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