横内章次

横内章次：昭和ジャズを代表するギタリストとその多才な活動

横内章次（1933年11月9日 - 1996年5月17日）は、満州大連出身の作曲家、編曲家、そしてギタリストとして、日本の音楽史にその名を刻んだ人物です。俳優の横内正、ギタリストの大川洋、横内弘は彼の弟にあたります。

大連商業高等学校卒業後、戦後九州に引き揚げ、小倉の米軍キャンプなどで演奏活動を開始。渡辺弘、吉屋潤、平岡精二といった当時の著名なミュージシャンとの共演を経て、自身のグループを結成。昭和ジャズシーンにおいて、卓越したギタリストとして頭角を現しました。

1960年代には、キングレコード、ビクターレコード、ポリドールレコード、日本コロムビアなど、日本の大手レコード会社を跨いでの活動が活発になります。自身のリーダーアルバムを数多く発表する一方、各社の洋楽部門の歌手やグループ・サウンズのアレンジ、追加演奏(アディショナルプレイ)も担当しました。その活動は、リーダーアルバム制作にとどまらず、多様なジャンルのレコーディングへのゲスト参加やオーケストラのアレンジなど多岐に渡り、今日のスタジオミュージシャン、音楽プロデューサー、編曲家、トラックメイカーといったスタイルの先駆けと言える活動ぶりでした。

東芝レコードと専属契約を結び「ミスターギター」として活躍した時期には、ジャズで培った高度なテクニックをベースに、ストレートなメロディーを情感豊かに奏でる、独特のプレイスタイルで人気を博します。その実力は高く評価され、映画、テレビ、ラジオ番組への出演も数多く、日本を代表するギタリストとして広く知られるようになりました。特に1967年の日活映画『夕陽が泣いている』では、「日本でNo.1のギタリスト」として、ヒロイン役の和泉雅子の兄役をザ・スパイダースと共に演じ、全編を通じて活躍しました。

この頃のイージーリスニングアルバムは海外でも高い人気を誇り、ヨーロッパや南米など、世界中に多くのファンを獲得しました。作曲・編曲の才能も高く評価され、『夕陽が沈む』（ザ・ベンチャーズ公演の定番曲）の作曲や、ハル・ワトキンス名義でジョーン・シェパードに提供した「サマー・クリエーション」がゴールドディスクを受賞するなど、その才能は多方面に渡って開花しました。

横内章次の代表作としては、東芝レコードの「ミスターギター」シリーズ、自身の大規模なオーケストラをバックに制作した「ゴールデンギター」シリーズ、本格派ジャズギターアルバムである『TOP STARS IN GUITAR』『サテンドール』『ジャンゴ』『アランフェス』『レディ・バード』『剣の舞』『ボイリング・ポイント』『グリーン・スリーブス』『ブロンド・オン・ザ・ロックス』などがあります。さらに、中本マリのアルバム『マリ』、奥村チヨのヒット曲「終着駅」といった歌謡曲の仕事や、ペギー葉山、マーサ三宅、笈田敏夫、岸洋子、菅原洋一、デューク・エイセスなど同世代のジャズ、シャンソン、ラテン歌手のアルバムの編曲、ニュー・サウンズ・イン・ブラス、社交ダンスなどのオーケストラ編曲、二木ゴルフのスイングに関するCM音楽制作など、その活動は多岐に渡り、日本の音楽シーンに多大な貢献をしました。彼の活動は、現代の音楽制作における様々な役割を先取りしており、日本の音楽業界に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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