横山康吉

横山康吉：日本の異性化糖開発の先駆者

横山康吉（よこやま こうきち、1913年11月 - 没年不詳）は、参松工業の社長として、日本で初めて酸糖化法によるブドウ糖生産を事業化に成功させた横山長次郎の養子です。彼は、日本の食品産業に大きな影響を与えた人物として知られています。

生い立ちと留学

横山康吉は、田中長兵衛の三男である吉田長三郎の五男として1913年に生まれました。1930年、親戚であった横山長次郎の養子となり、横山家を継承します。慶應義塾高等部を卒業後、1936年には伯父である小泉信三と共にアメリカへ渡り、ボストン・カレッジで学びました。アメリカ滞在中には、従姉妹の夫である田中耕太郎と共にニューヨーク万国博覧会でアインシュタインの演説を聴く機会がありましたが、会場への到着が遅れ、その機会を逃しています。

鈴木商店（味の素）での勤務と結婚

大学卒業後、横山康吉は鈴木商店（現在の味の素）に入社し、ロサンゼルス駐在員として勤務しました。1940年には安川敏子と結婚し、翌年には長男・久一を授かっています。しかし、太平洋戦争の開戦が迫る1941年8月に退職し、妻子と共に帰国しました。

参松工業での活躍

帰国後、横山康吉は養父・長次郎が創業した澱粉やグルコースの製造会社、参松工業に入社し、専務として経営に携わります。1946年に長次郎が急逝すると、横山家と参松工業の社長職を継承しました。

横山康吉は、参松工業において数々の革新的な取り組みを行いました。1960年には理化学研究所と提携し、国内初の液内培養法による糖化酵素の工業生産に成功。1965年には工業技術院醗酵研究所と提携し、世界で初めての異性化糖生産の事業化に成功しました。この異性化糖は、1967年に「サンフラクト」という名称で商品化され、日本の食品産業に広く利用されるようになりました。1968年には、異性化糖の生産技術確立に対し、毎日工業技術奨励賞を受賞しています。

1992年、横山康吉は参松工業の社長職を長男の久一に譲り、自身は会長に就任しました。また、参松澱粉工業、澱粉工業助成の社長も務めました。

家族

横山康吉の家族は、政界、財界、学術界に多くの著名人を輩出しています。養母・勝の実兄は慶應義塾長を務めた小泉信三であり、勝の実姉・千の夫は商工大臣や法制局長官を歴任した松本烝治です。また、烝治の弟子であり娘婿の田中耕太郎は第二代最高裁判所長官を務めました。妻・敏子は1964年の東京オリンピックで組織委員会会長を務めた安川第五郎の長女であり、安川財閥の創始者・安川敬一郎を祖父に持ちます。福澤諭吉の三男・福澤三八は敏子の伯父にあたります。

長男・久一はペンシルベニア大学大学院で学び、参松工業の取締役を経て社長に就任。次男・武次は慶應大経済学部を卒業後、三菱銀行に入行し、後に参松の取締役を務めました。長女・淳子は聖心女子大学を卒業後、米国へ留学しています。

横山康吉は、日本の食品産業に革新をもたらしただけでなく、多くの有能な人材を育てた人物として、その功績は永く記憶されることでしょう。

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