横歩取り8五飛

横歩取り8五飛：中座飛車の歴史と戦略

横歩取り8五飛は、将棋における独特な戦法です。その名称の通り、横歩取りの一種であり、後手が飛車を8五に移動させるのが特徴です。別名「中座飛車」とも呼ばれ、後手番において高い勝率を誇った時期もありました。この戦法は、後手が積極的に主導権を握る展開へと導くことで知られています。

戦法の展開

横歩取り8五飛は、飛車先の歩の交換をきっかけに展開します。先手が▲8七歩と進撃した場合、後手は△8五飛と飛車を8五に移動します。その後、後手は金銀4枚を自陣に配置し、飛車と角、左右の桂を活用して攻め込む展開になります。囲いは、多くの場合、中原[[囲い]]が選択されます。中原[[囲い]]の堅牢性と相まって、この戦法はかつて後手番において驚異的な勝率を記録しました。

この戦法の成否は、△8五飛という手を先手が咎められないかどうかにかかっています。▲9六角などの対抗策も試みられてきましたが、△8五飛そのものを防ぐことは不可能という結論に至っています。

戦法の歴史と棋士たち

横歩取り8五飛は、1997年に中座真九段が公式戦で初めて採用したとされています。そのため、「中座飛車」の別名も持ちます。中座九段自身は、この戦法を頻繁に用いることはありませんでしたが、同じ対局場で観戦していた野月浩貴九段がその有効性に気づき、その後積極的に活用するようになりました。

1998年には井上慶太九段がA級順位戦でこの戦法を用いて勝利、A級残留を果たすなど、大きな注目を集めました。この戦法は「生みの親は中座、育ての親は野月、世に広めたのは井上」と言われるほど、複数の棋士によって発展・普及していったのです。中座九段は、この戦法の功績により、升田幸三賞を受賞しています。

野月九段は、1998年度の早指し新鋭戦で、先手番で意図的にこの戦法を適用し優勝しています。また、丸山忠久九段もこの戦法を駆使して名人挑戦権を獲得したことで有名です。丸山九段は1999年度A級順位戦で後手番4局全てでこの戦法を用い全勝を収めました。名人戦でもこの戦法を選択し、結果こそ微妙でしたが、その成功への貢献度は大きいと評価されています。

戦法の進化と変種

横歩取り8五飛は、多くの棋士によって研究され、様々な変種が生まれました。後手側としては、「8五飛松尾流」などが有名で、先手側はそれを防ぐための「山崎新手」「（旧）山崎流」「新山崎流」などの対策が考案されています。これらの変種は、戦術的な工夫や、囲いの変化などを含んでいます。

例えば、「8五飛松尾流」は、飛車を角筋上の5五に回すもので、1999年に初登場しました。その後、2009年に再注目されています。先手側も、連続歩捨てで飛車の動きを封じる「山崎新手」、居玉のまま攻撃的な陣形を作る「新山崎流」など、様々な対応策を編み出しました。

現代における評価

横歩取り8五飛は、タイトル戦でもしばしば見られる戦法でしたが、近年は指される頻度が減少傾向にあります。一手損角換わりやゴキゲン[[中飛車]]などの戦法の台頭も、その一因と考えられます。しかし、今でも一部のスペシャリスト棋士によって研究され、用いられています。

この戦法は、戦術の深く複雑な駆け引きを必要とするため、高い棋力と研究が必要とされる奥深い戦法と言えるでしょう。今後も、新たな発見や進化が期待される戦法の一つです。

もう一度検索