横浜英国領事裁判所

横浜英国領事裁判所について

横浜英国領事裁判所（British Court for Japan）は、1879年に横浜に設立された裁判所で、日本に在住する大英帝国臣民に対する裁判を行うために設立されました。この裁判所は、日本国内の英国領事館が扱う領事裁判の上級裁判所としても機能していました。上訴が必要な場合には、上海の英国高等領事裁判所が担当しました。

設立の背景

日英修好通商条約の締結により、1858年から英国は日本国内での領事裁判権を獲得しました。この条約に伴い、各居留地の領事館が初回の審理を行い、その後の上告は1865年までは香港の英国最高領事裁判所が担当し、それ以降は上海の英領高等裁判所がその役割を果たしていました。上海の高等領事裁判所の判事は、日本国内での裁判を巡回して行う権利を持っていました。

横浜英国領事裁判所の設立

1871年、ニコラス・ハンネン判事補代理が上海から派遣され、横浜に高等裁判所の支部が設立されました。1872年には制度が変更され、判事が横浜に滞在することになりますが、彼らの身分は神奈川領事館の判事というものでした。1877年と1878年には、判事代理のハイラム・ショウ・ウィルキンソンが医療用アヘンの輸入を適法と判断したことが、日本政府の反発を招く原因となりました。これを受けて、英国政府は正式に横浜に領事裁判所を設立することを決定しました。そして、1879年1月1日に横浜英国領事裁判所が正式に開設されました。この裁判所は神奈川領事館の訴訟を扱う一次裁判所として機能し、他の領事館による領事裁判の二次裁判所としても役割を果たしました。控訴は、やはり上海の高等領事裁判所に上げられました。

建物の概要

横浜英国領事裁判所は、領事館に併設された形で運営されました。しかし、1923年には関東大震災によりその建物が破壊されてしまいました。通常、領事館で行われる巡回領事裁判が一般だったものの、重要な裁判の場合は、他の場所で公に行われることもありました。

治外法権の廃止

1894年には日英通商航海条約が締結され、1899年7月からは日本における英国の治外法権が消失することとなりました。ただし、1899年7月以前に発生した訴訟については、その後も引き続き横浜領事裁判所で手続きが行われたため、1900年初頭までは裁判所として機能を保ちました。

担当した裁判の種類

横浜領事裁判所では、日本国内における英国の法律が適用されるあらゆる裁判が行われました。具体的には、殺人の裁判や離婚、民事訴訟に関するもののほか、軽犯罪まで幅広く取り扱われました。特に著名な事件として、以下のものが挙げられます。

- ノルマントン号事件: ノルマントン号が沈没した際、船長ドレークが日本人乗客30人を見殺しにしたとされる訴訟。
- 千島艦事件: 大日本帝国海軍の水雷砲艦千島が英国商船と衝突・沈没した事件。
- イーデス・カルー事件: 1897年に、イーデス・カルーがヒ素を使って夫を毒殺した事件。

判事について

1879年から1900年までに、横浜英国領事裁判所には4人のフルタイムの判事が勤務しました。それ以前の1871年から1878年には、上海の高等領事裁判所から派遣された2人の判事が横浜に駐在していました。主要な判事は次の通りです。

- ニコラス・ハンネン: 1871年から1874年まで判事補代理として勤務。
- チャールズ・グッドウィン: 1874年から1877年まで判事補。
- リチャード・レニー: 1879年から1881年まで担当。その後、高等領事裁判所の上席判事に転任。
- ニコラス・ハンネン: 1881年から1891年まで再び判事として勤務。
- ロバート・モワット: 1891年から1897年までの間、高等領事裁判所の次席判事から転任。
- ハイラム・ショウ・ウィルキンソン: 1897年から1900年まで勤務。

正規の判事が不在の場合、領事館の職員が代理判事として裁判に参加することもありました。このように、横浜英国領事裁判所は日本における英国の法的地位を支える重要な役割を果たしていました。

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