横田永之助

日本の映画界を牽引した巨人：横田永之助の生涯

横田永之助(1872-1943)は、日本の映画黎明期からその発展に多大なる貢献を果たした、実業家にして映画製作者、興行師である。彼の名は、日本の映画史に深く刻まれている。

京都に生まれた横田は、若くして上京、高等商業学校予科卒業後、渡米して商業を学ぶ。帰国後は、様々な事業に関わる中で、1897年、兄の紹介で知ることになったシネマトグラフの興行を引き受ける。これが、彼の映画界への本格的な参入の始まりとなる。

当初は関東での興行に苦労するも、持ち前の行動力で神田や浅草で成功をおさめる。その後、パリ万国博覧会に出品委員として参加した際に、発展著しいフランス映画業界に感銘を受け、パテ社とフィルム購入契約を結び、ゴーモン映写機や映画フィルムを日本に持ち帰る。

帰国後、彼は東京・新富座でパリ万国博覧会や英仏戦争を題材にしたフィルムを上映し、大きな反響を得る。さらに、軍関係者や恩師の紹介を通じて、兵営や学校への巡回上映を実施。組織的な巡回興行隊を結成し、全国各地を駆け巡った。

日露戦争開戦時には、パテ社から日露戦争の実況フィルムを輸入。同時に、劇映画の輸入も開始し事業は拡大。11もの巡業班を組織するまでに至る。横田自身も各地を回り、事業を統括した。この頃、様々な名称で活動していた巡回興行班は、「横田商会」に統一された。

1908年頃からは、映画製作にも着手。同年、『いもりの黒焼』を皮切りに、牧野省三や尾上松之助ら、後に日本映画界を代表する人物を起用した時代劇映画を数多く製作。1910年には、京都に撮影所を設立し、映画制作体制の強化を図った。

1912年、横田商会は他社との合併により、日本活動写真株式会社（日活）を設立。横田は取締役、後に社長に就任する。日活社長時代には、経営危機を乗り越えるなど、辣腕ぶりを発揮した。

1928年には、贈収賄事件に関与したとして一時拘留されるも、すぐに釈放された。その後、日活社長を退任し、相談役に就任。1943年、70歳で逝去した。

横田永之助は、単なる興行師や映画製作者ではなく、日本の映画産業そのものの発展に貢献した人物である。シネマトグラフの導入から、映画制作、興行、そして日活の設立と経営に携わった彼の功績は、日本の映画史に燦然と輝いている。彼の存在なくして、今日の日本の映画界はありえなかったと言えるだろう。彼の生涯は、日本の映画史を語る上で欠かせない重要な一章をなしている。

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