横田河原の戦い

横田河原の戦い

横田河原の戦い（よこたがわらのたたかい）は、平安時代末期の治承・寿永の乱（源平合戦）において、信濃国（現在の長野県）で勃発した戦いです。この戦いは、源氏方の源義仲（木曾義仲）率いる軍勢と、平氏方の越後国（現在の新潟県）の有力武将である城助職（じょうすけもと）率いる軍勢との間で繰り広げられました。

合戦の時期

合戦の正確な時期については、史料によって記述が異なっています。『吾妻鏡』では寿永元年（1182年）10月、『平家物語』の延慶本を除く諸本では同年9月とされています。しかし、同時代史料である『玉葉』では治承5年（1181年）6月の出来事として記録されており、この『玉葉』の記述が最も信憑性が高いと考えられています。

戦いの背景

治承4年（1180年）9月頃、源義仲や源親義、井上光盛ら信濃源氏が、以仁王の令旨に応えて挙兵しました。これに対し、平氏は越後の有力者である城助職を派遣し、信濃源氏を牽制しようとしました。その前哨戦として、市原（現在の長野市若里付近）で笠原氏と村山氏・栗田氏の間で合戦（市原合戦）がありましたが、決着はつきませんでした。

戦いの経過

治承5年（1181年）6月、城助職は大規模な軍勢を率いて信濃に侵攻し、川中島平南部の横田城に布陣しました。対する義仲は、佐久郡の依田城を拠点とし、木曽衆、佐久衆（平賀氏ら）、甲斐衆（実際は上州衆との説あり）を集結させ、横田河原で激突しました。

この戦いで、井上光盛は奇策を用いました。千曲川の対岸から平氏の赤旗を掲げて城氏の軍勢に接近し、近づくと源氏の白旗に切り替えたのです。この奇襲によって、城氏の軍勢は混乱に陥りました。また、長旅による疲労や油断も重なり、城氏の軍勢は9,000騎以上が討たれるか逃亡する大敗北を喫しました。

兵力で大きく劣っていた信濃源氏が勝利した要因は、この奇策と城氏軍の油断にありました。敗れた城助職は負傷し、わずか300騎ほどで越後へ逃げ帰りました。その後、城氏の勢力は衰退し、奥州会津への撤退を余儀なくされました。さらに会津では奥州藤原氏の攻撃を受け、最終的に没落することになります。

一方、勝利した義仲は越後国府に入り、越後の実権を握りました。この勝利を機に、若狭や越前など北陸諸国で反平氏勢力の活動が活発化し、義仲は後の倶利伽羅峠の戦いで勝利し、北陸を制覇する足がかりとしました。また、この戦いは平氏が北陸地方での勢力を失うきっかけとなり、治承・寿永の乱全体における平氏の劣勢を決定づける要因の一つとなりました。

戦いの影響

横田河原の戦いは、単なる一地方の戦いにとどまらず、その後の源平合戦の展開に大きな影響を与えました。義仲は北陸での勢力を拡大し、平氏の勢力は衰退へと向かいました。

この戦いは、源氏の台頭を印象づけるとともに、平氏の没落を加速させる上で重要な転換点となったと言えるでしょう。

参考文献

塚田正朋『長野県の歴史』（1974年、山川出版社）

関連項目

日本の合戦一覧
* 春近領

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