橋場駅

岩手県雫石町、橋場駅：幻の終着駅とその歴史

岩手県岩手郡雫石町橋場にあった橋場駅は、数奇な運命を辿った駅のひとつです。太平洋戦争下の1944年、不要不急線として休止となり、その後も正式な廃止を迎えずに現在に至っています。かつて盛岡と大曲を結ぶ路線の計画において重要な役割を担っていた橋場駅ですが、その歴史と現状、そして周辺に残る遺構について見ていきましょう。

駅の構造と遺構

橋場駅は地上駅で、2面2線のホームを有していました。ホームへは階段でアクセスする構造だったことが、残る遺構から推測されます。駅周辺には、当時の面影を色濃く残す痕跡が数多く見られます。特に目を引くのは、ホーム付近にあるコンクリート製の円形構造物です。これは、かつて駅で使用されていた転車台の名残ではないかと考えられています。現在では、毎年の豪雪による雪解け水の影響で、この構造物は大きな池へと変わってしまっています。この池は、静かに往時の賑わいを偲ばせるかのような、なんとも物悲しい光景を作り出しています。

開業から休止、そして現在へ

橋場駅は、盛岡駅から生保内駅（現在の田沢湖駅）を経由し、大曲駅に至る路線計画の一環として建設されました。1922年、「橋場線」として盛岡駅から橋場駅までの区間が開業、橋場駅は同線の仮の終着駅としてその歴史をスタートさせました。しかし、太平洋戦争の激化により、1944年には不要不急線に指定され、雫石駅～橋場駅間は休止、線路は撤去されました。戦後、橋場～生保内間の建設が「生橋線」として計画されたものの、ルート変更により、現在の田沢湖線のルートが選定され、橋場駅は新たな路線に含まれることはありませんでした。このルート変更により、赤渕駅付近に新たな駅が設置され、雫石～赤渕間が再開業。その後、新ルートにより橋場線は「田沢湖線」として全線開業しましたが、橋場線、そして橋場駅は、再開されることなく、廃線と発表されることもなく、休止駅としてそのまま放置されたのです。1987年の国鉄分割民営化後も、橋場駅を含む橋場線雫石～橋場間はJR東日本に承継されず、現在では事実上廃止状態となっています。2021年に締結された「秋田新幹線新仙岩トンネル整備計画の推進に関する覚書」にも、橋場駅や橋場線は含まれていません。

アクセス方法

橋場集落は国道46号沿いに位置し、上安栖公民館の裏手約20mに、駅の遺構は静かに佇んでいます。アクセスは雫石駅からタクシー、もしくは雫石町営あねっこバス（予約制）の御明神線を利用し、「橋場」停留所で下車、徒歩すぐです。最寄りの駅は赤渕駅ですが、徒歩で約30分かかります。

歴史的背景と周辺情報

橋場駅周辺は、歴史的にも興味深い場所です。宮沢賢治の作品『化物丁場』では、橋場付近で発生した崖崩れが描写されており、当時の険しい工事の様子が伺えます。また、周辺には、かつての橋場線の面影を残す遺構が点在しており、歴史探索の対象としても注目されています。

まとめ

橋場駅は、戦時下の政策によって休止となり、その後も放置されたまま、歴史の闇に葬られたかのような駅です。しかし、その遺構は、かつて存在した鉄道の記憶を今に伝えています。静かに佇むその姿は、過ぎ去った時代への郷愁を誘い、そして日本の近代化の歴史の一端を垣間見せてくれます。この駅の歴史を知ることで、私たちは過去の出来事から多くのことを学ぶことができるでしょう。残された遺構を通して、失われた歴史と未来への希望を繋いでいくことが重要です。そして、この地を訪れた際には、静かにその歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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