橘公業

橘公業（たちばな の きみなり）

橘公業は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて活躍した武士です。公成、小鹿島公業とも呼ばれ、長門国の守護を務めました。特に弓の名手としてその名を知られています。

生涯

橘公業は、橘公長の次男として生まれました。当初は平知盛の家人であった父に従い、治承4年（1180年）に平家を見限り、源頼朝の軍門に加わります。奥州合戦での功績により、出羽国小鹿島（現在の秋田県男鹿市）の地頭に任じられました。

文治5年（1189年）に発生した大河兼任の乱では、敵前逃亡とも取れる行動を見せ、一時的に源頼朝の不興を買いました。しかし、結果的には援軍を待ってから敵に当たるという慎重な判断が適切であったと評価され、乱後も小鹿島の所領を維持することができました。さらに、出羽国秋田郡（現在の秋田県南秋田郡、潟上市、秋田市）も加増されています。

承元3年（1209年）12月には、御家人の美作朝親の妻と密通していたことが発覚し、朝親との間で合戦寸前の事態に発展しました。この騒動は、実朝の命を受けた北条時房の仲介によってようやく収束しました。

承久3年（1221年）には、長門守護に任じられます。嘉禎2年（1236年）には、本領であった伊予国宇和郡を西園寺公経に譲り、その替地として肥前国杵島郡長島庄、大隅国種子島、豊前国副田庄、肥後国球磨郡久米郷を与えられました。これにより、子孫は肥前国杵島郡長島庄を中心に勢力を拡大し、潮見山に潮見城を築いて居城としました（1237年）。

かつて所領とした小鹿島の地名を取って小鹿島氏を称し、子の公義の子（公業の孫）の代には、渋江、牛島、中村、中橋の四家に分かれ、肥前を中心に繁栄しました。

橘公業は、源平合戦から鎌倉時代初期にかけての激動の時代を生き抜き、武士としての地位を確立するとともに、子孫の繁栄の礎を築いた人物として評価されています。

関連資料

* 吾妻鏡

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