橘守部

橘守部：江戸時代後期の国学者とその業績

橘守部（たちばなもりべ、1781年5月1日-1849年7月13日）は、江戸時代後期の著名な国学者です。三重県三重郡朝日町小向の庄屋の家に生まれ、父の影響で幼い頃から国学に触れていました。通称は飯田元輔・源助、号は池庵、椎本、生薬園などを使用していました。

生涯

橘守部は、1781年、伊勢国朝明郡小向村（現在の三重県三重郡朝日町小向）で庄屋の家に生まれました。父である飯田元親は、国学者谷川士清に師事しており、この家系が橘守部の国学への道を決定づけることになります。文化6年（1809年）、橘守部は武蔵国幸手に移住し、田村清八の娘政子と結婚しました。晩年は江戸で過ごし、肥前国平戸藩主松浦氏の知遇を得ていました。1849年、69歳でこの世を去り、墨田区向島の長命寺に埋葬されました。その墓碑は現在、墨田区の登録文化財に指定されています。1928年には正五位を追贈されています。

業績

八丁堀に転居した頃より、『宇治大納言物語』『古今和歌集』『十訓抄』などの古典を読み漁り、本格的に国学の研究に没頭しました。これは、亡き父の後を継ぐかのような、自然な流れだったと言えるでしょう。

橘守部の学問における大きな特徴は、本居宣長への痛烈な批判と、『日本書紀』を重視する姿勢にあります。彼は『古事記』よりも『日本書紀』を重んじ、神話の伝説的要素と史実的要素を明確に区別する必要性を説きました。晩年には、死生観にも関心を寄せ、独自の死後安心論を展開しました。

彼の学説は武蔵国北部から上野国にかけて広く普及し、多くの門弟が育ちました。特に機業家を中心に、橘守部の学問は地域社会に根付いていきました。

著作

橘守部は多岐にわたる著作を残しており、その内容は国学のみならず、歴史、文学、思想など多様な分野に及んでいます。主な著作として、『神風問答』『伊勢物語箋』『待問雑記』『山彦冊子』『稜威道別』『稜威言別』『神代直語』『難古事記伝』『土佐日記舟の直路』『万葉集墨縄』『万葉集檜嬬手』『湖月抄別記』『長歌撰格』『短歌撰格』『心の種』などがあります。これらの著作は、後世の国学研究に多大な影響を与えました。

参考文献

鈴木暎一『橘守部』吉川弘文館〈人物叢書〔新装版〕〉、1988年
墨田区教育委員会 編『すみだゆかりの人々』墨田区教育委員会、1985年
村岡典嗣『日本思想史研究』岩波書店、1930年
徳田進『橘守部の国学の新研究：産業意識と国民文化の形成』高文堂、1974年
徳田進『橘守部と日本文学：新資料とその美論』芦書房、1975年
朝日町歴史博物館編『橘守部と伊勢の国学者たち』朝日町歴史博物館、2001年
朝日町歴史博物館編『守部と秋主と平戸藩：国学者をとりまく人々』朝日町歴史博物館、2003年
朝日町歴史博物館編『郷土の人 橘守部』朝日町歴史博物館、2006年
朝日町歴史博物館編『橘守部の学問：斯道文庫コレクション展』朝日町歴史博物館、2012年
朝日町歴史博物館編『橘守部：国学研究と門人たち』朝日町歴史博物館、2021年

これらの文献は、橘守部の生涯や業績をより深く理解する上で貴重な資料となります。橘守部の研究は現在も続けられており、彼の思想や業績は現代社会においても重要な意味を持つと言えるでしょう。

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