櫛引城

櫛引城の歴史と構造

櫛引城は、現在の青森県八戸市櫛引に位置する平城です。八戸市の中心部から南へ約2キロメートル、櫛引八幡宮の近くにありました。東西約600メートル、南北約1400メートルと広大な敷地を有し、現在は櫛引薬師如来堂がその跡地に建てられています。

地理的特徴と防御

城は馬淵川の東岸に位置する丘陵上に築かれ、西側は断崖、他の三方は谷に囲まれた天然の要害でした。しかし、出丸の防御力が低いことと、南方へ丘陵が続いている点が弱点でした。この弱点を補うため、城の南方には一族の支城が築かれていました。城の周辺には、根城へ続く本道、南郷村へ続く嶋守道、名久井へ続く名久井道といった主要な道が通っていました。城下町は、城と通清水を結ぶ道沿いに形成されていました。

城の構造

櫛引城は、本郭、外郭、そして出丸の三つの主要なエリアに分かれていました。本郭はチャシ形式で、外郭には侍屋敷などの施設がありました。本郭の北には堀で隔てられた高台に「今館」と呼ばれる出丸が設けられていました。出丸の北側には、かつては掘割があったと伝えられています。

歴史

築城年代は不明ですが、櫛引氏の居城として知られています。櫛引氏は当初、根城南部氏に仕えていましたが、後に三戸南部氏に従うようになりました。永禄10年（1567年）、櫛引氏は八戸政栄の留守中に領地を侵略し、放火したため、元亀2年（1571年）に八戸氏の軍勢によって攻撃を受けました。東政勝の支援を受けたものの、櫛引氏は降伏しました。

天正19年（1591年）の九戸政実の乱では、当主の櫛引清長とその弟清政が九戸方に加担し、浅水城、苫米地城、根城、是川館などを攻撃した後、九戸城に入城しました。しかし、豊臣秀次率いる奥州再仕置軍によって鎮圧され、清長は戦死、清政は九戸政実と共に降伏した後、三迫松尾村で処刑され、櫛引氏は滅亡しました。櫛引城も根城南部氏の攻撃を受け、落城しました。

天正20年（1592年）の『諸城破却書上』には、「櫛引 平城 破 代官 桜庭 将監」と記されており、この時に破却されたことがわかります。

まとめ

櫛引城は、その地理的特性を活かした堅固な城郭でしたが、九戸政実の乱という歴史の波に翻弄され、その短い歴史を終えました。現在では、その面影を薬師如来堂に見るのみとなっています。

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