九戸城

九戸城（くのへじょう）

概要

九戸城は、岩手県二戸市福岡に位置する中世の平山城です。別名を宮野城とも言い、その歴史は古く、主に南部氏の一族である九戸氏が居城としていました。築城年代については諸説あり、『系胤譜考』では7代目光政の時代、『奥南落穂集』では12代目信実の時代とされています。また、11代目政実が二戸を加増されて移り住んだという説もあります。

この城は、天然の要害としての立地が特徴で、西側を馬淵川、北側を白鳥川、東側を猫淵川と三方を河川に囲まれています。城内には空堀が設けられ、本丸、二の丸、三の丸、若狭館、外館、松の丸などの曲輪群が形成されています。本丸の一部には東北地方最古とされる石垣が残っており、その規模は東北地方でも有数でした。しかし、江戸時代初期には廃城となりました。

1935年（昭和10年）には、城跡が国の史跡に指定され、現在では保存整備が進められています。ただし、三の丸跡の大部分は市街地となっており、史跡指定の対象外となっています。

沿革

九戸城の歴史を語る上で欠かせないのが、九戸政実の乱です。九戸政実は、南部氏の家督争いで石川（南部）信直と対立しており、信直が豊臣秀吉から領地を安堵されたことを不服として挙兵しました。この行動は、豊臣政権に対する反乱とみなされ、秀吉は豊臣秀次を総大将として、浅野長政、蒲生氏郷ら関東・奥羽の諸将を派遣し、鎮圧に乗り出しました。

1591年9月2日、約6万の兵力で九戸城は包囲され、助命を条件に降伏開城しましたが、約束は反故にされ、政実をはじめとする首謀者は処刑されました。城内にいた人々も女子供構わず皆殺しにされたと伝えられています。近年、城跡から多くの人骨が発掘されていますが、これらが当時の犠牲者であるかは明確にはなっていません。

この乱は、秀吉による天下統一の総仕上げと位置づけられますが、豊臣軍が謀略や虐殺を行った事実は、歴史書から抹消されたとも言われています。二ノ丸跡の発掘調査では、首を刎ねられたり刀傷を負った人骨が多数発見されており、当時の惨状を物語っています。

乱後、九戸城は蒲生氏郷によって改修され、南部家の本城として南部信直に引き渡されました。これにより、三戸城から居を移し、九戸は福岡と改称されましたが、領民は九戸城と呼び続けたと言われています。

その後、1597年（慶長2年）に不来方（盛岡）に築城され、南部氏の居城は盛岡城へと移されましたが、九戸城は1636年（寛永13年）まで存続し、廃城、破却されました。

1989年（平成元年）から九戸城の史跡環境整備事業が開始され、本丸・二ノ丸跡を中心に継続的な発掘調査が行われています。1995年（平成7年）には二ノ丸跡で墓穴が発見され、刀傷や刺傷のある人骨が多数発見されました。1999年（平成11年）には二ノ丸跡で工房の遺構が発見され、鎧の札などが出土しました。これらの調査によって、九戸氏が中央とも交流があり、交易が行われていたことが明らかになりました。

2017年（平成29年）4月6日には、九戸城は続日本100名城（104番）に選定されています。

脚注

注釈

特になし

出典

特になし

参考文献

児玉幸多、坪井清足『日本城郭大系　第2巻　青森・岩手・秋田』新人物往来社、1980年7月15日。
関豊「史跡九戸城跡（福岡城跡）について」『中世城郭研究』第9号、中世城郭研究会、1995年、222-225頁、ISSN 0914-3203。
小和田哲男監修『日本の城』小学館〈ビジュアルワイド〉、2005年3月。ISBN 4-09-681563-2。
村田修三総監修 著、八巻孝夫ほか 編『日本名城百選』小学館〈ビジュアル・ワイド〉、2008年。ISBN 978-4096815649。

関連項目

北海道・東北地方の史跡一覧
福岡城 (筑前国)) - 同名の城郭

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