欧州規模の政党

欧州規模の政党：国境を超える政治勢力

欧州規模の政党とは、ヨーロッパ諸国をまたがって活動する政党組織のことです。別名、欧州政党、またはユーロパーティとも呼ばれています。これらの政党は、EUのマーストリヒト条約に基づき、EUから資金援助を受けて活動しています。

EUは、欧州規模の政党の設立と活動を促進することで、欧州統合を推進し、欧州議会議員選挙の投票率向上を目指しています。2006年までに、欧州議会から活動資金を受け取る資格を持つ10の欧州政党が設立され、議会内では政党間、あるいは政党と無所属議員間で政治会派を形成しています。近年では、欧州委員会がセミナー開催や活動資金の増加といった施策を通じて、欧州規模の政党の成長を後押ししています。

主要な欧州規模の政党

2020年現在、多数の欧州規模の政党が活動しています。主な政党には以下のようなものがあります。

欧州人民党 (EPP): ドイツキリスト教民主同盟やフランス国民運動連合など、中道右派系の政党が多数加盟する、キリスト教民主主義を基盤とする大きな勢力です。
欧州社会党 (PES): フランス社会党やイギリス労働党など、社会民主主義や民主社会主義を掲げる中道左派の政党で構成されています。
欧州自由民主同盟 (ALDE): 自由民主主義や中道主義を支持する政党の連合体です。
欧州民主党 (EDP): 中道主義と欧州統合主義を重視する政党で構成されています。
欧州自由同盟 (EFA): 地方主義や分離主義を主張する政党の連合体です。
欧州緑の党 (EGP): 各国の環境主義政党が加盟する、中道左派の政党です。
欧州左翼党 (GUE/NGL): 民主社会主義やユーロコミュニズムを掲げる左派政党の連合体です。
欧州保守改革党 (ECR): ポーランドの法と正義など、東欧の保守政党が中心となっている右派政党です。
欧州キリスト教政治運動 (ECPM): キリスト教民主主義やキリスト教右派を支持する政党の連合体です。
アイデンティティ・民主党 (ID): 極右や欧州懐疑主義を主張する政党で、かつては「国家と自由の欧州運動」として活動していました。

EUからの助成金と条件

欧州規模の政党としてEUから助成金を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。具体的には、加盟国で法人格を有し、加盟国の4分の1以上で欧州議会議員、国会議員、または地方議員が選出されていること、もしくは直近の欧州議会議員選挙で加盟国の4分の1以上の国で3パーセント以上の得票を得ていることが求められます。さらに、EUの原則（自由・民主主義・人権の尊重・法の支配）を遵守し、欧州議会議員選挙に参加していること、または参加する意向を表明していることが必要です。

また、助成金を受ける政党は、500ユーロ以上の献金を公開する必要があり、12000ユーロ以上の献金の受領は禁止されています。

その他の欧州規模の政治組織

EUに正式に登録されていないものの、欧州規模で活動する政治組織も存在します。例えば、欧州連邦主義を掲げるVolt Europa、動物の権利保護を訴える動物政治EU、欧州海賊党などがあります。また、国内政党間の同盟やネットワークとして活動する組織も数多く存在します。

欧州規模の政党を取り巻く課題と論争

欧州規模の政党は、有権者との結びつきの弱さが課題として指摘されています。共通のマニフェストを策定していますが、実際の選挙運動は各国の国内政党が行うことが多く、候補者の選定も国内政党が担っているケースが多いです。

さらに、欧州規模の政党への助成金は加盟する国内政党の活動には使用できません。この点が、EUの掲げる多元主義や民主主義の価値観に反しているとして、欧州司法裁判所に訴訟が提起されたこともありましたが、いずれも棄却されています。

欧州規模の政党は、欧州統合の推進において重要な役割を果たしていますが、その活動には課題も多く残されています。今後の発展に向けて、国民との信頼関係の構築や、資金助成金のより効果的な活用方法の模索が重要になります。

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