歌うロマンスタジオ

『歌うロマンスタジオ』は、1970年代初頭にフジテレビ系列で放送された、異色の歌謡バラエティ番組でした。具体的には、1970年1月1日から同年3月26日までと、間の休止期間を経て1970年10月1日から1971年3月25日までの二期にわたって、毎週木曜日の夜10時から10時56分までの時間帯にカラー放送されていました。フジテレビが自社で制作を手がけたこの番組は、当時のテレビ番組としてはユニークな構成を持っていました。

番組の最大の特徴は、通常の歌番組とは異なり、毎回数組のプロ歌手に加えて、一組の著名人夫婦を「スペシャルゲスト」としてスタジオに招いていた点です。登場する歌手たちは、時代の流行を反映した最新のヒット曲はもちろんのこと、すでに多くの人々に長く愛され続けている懐かしいメロディーも情感豊かに歌い上げ、視聴者を楽しませました。

一方、スペシャルゲストとして登場する夫婦は、番組に「ロマン」という冠が付いた由来ともいえる重要な役割を担いました。彼らは司会者との和やかなトークの中で、二人の出会いから結婚に至るまでの馴れ初めや、共に歩んできた人生の中で心に残るエピソードを率直に語りました。その内容は、時に感動的であったり、時にユーモラスであったりと、多岐にわたりました。さらに、この夫婦ゲストはただ語るだけでなく、二人の思い出に深く結びついた楽曲や、特に愛着のある歌を一曲選び、披露するという企画も番組の大きな柱でした。夫または妻のどちらかがソロで歌ったり、時には二人で息を合わせたデュエットを聴かせたりと、そのパフォーマンスは彼らの物語をより一層豊かなものにしました。

記念すべき第1回放送では、当時の映画界・芸能界を代表するスター夫婦であった石原裕次郎氏と北原三枝さんがスペシャルゲストとして出演し、大きな注目を集めました。この初回放送は、関東地区において平均視聴率12.1%（ビデオリサーチ調べ）を記録しており、番組への関心の高さを示しています。

この番組は、半世紀以上前のものですが、放送された映像が現在でも様々な形で活用されています。例えば、フジテレビが制作する情報番組『情報プレゼンター とくダネ!』や、人間ドラマに深く切り込むドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』などで、かつてこの番組に出演した特定の人物に焦点を当てる際に、当時の彼らの姿や言葉を伝える貴重な資料映像として使用されることがあります。

また、昭和歌謡界の伝説的な存在である美空ひばりさんが出演した放送回も特筆されます。1970年1月29日、2月26日、3月12日の放送回に登場した美空ひばりさんの歌唱やトーク部分は、後に発売されたDVD-BOX『gift〜天からの贈り物〜 美空ひばりヒストリーinフジテレビ 1967〜1989』に厳選されて収録されており、時代を超えて多くのファンがそのパフォーマンスを鑑賞することが可能です。

番組を進行したのは、ベテラン女優の高峰三枝子さんとアナウンサーの小林大輔さんでした。彼らの巧みなリードによって、ゲストの歌やトークがより引き立てられました。スペシャルゲストとしては、以下のような当時の各界を代表する多くの著名人夫婦が出演しました。

石原裕次郎・北原三枝夫妻
勝新太郎・中村玉緒夫妻
林家三平・海老名香葉子夫妻
仲代達矢・宮崎恭子夫妻
神津善行・中村メイコ夫妻
山本丈晴・富士子夫妻
根上淳・ペギー葉山夫妻
長門裕之・南田洋子夫妻
* ジェリー藤尾・渡辺トモコ夫妻

『歌うロマンスタジオ』は、単なる歌番組でもトーク番組でもなく、歌と人生、そして夫婦の絆というテーマを織り交ぜた、当時のテレビとしては画期的な企画であり、多くの視聴者に感動と共感を与えた番組と言えるでしょう。

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