歌川国安

歌川国安：江戸時代後期の浮世絵師

歌川国安（うたがわ くにやす、1794年-1832年）は、江戸時代後期を代表する浮世絵師の一人です。安治郎、一鳳斎という雅号も使用し、一時西川安信を名乗った時期もあったと伝えられています。江戸で生まれ、歌川豊国の門下に入門。本所相生町、後に深川扇橋を住まいとしました。

国安の作画活動は文化年間から天保年間にかけてと推定され、文化5年（1808年）の役者絵には師である豊国への師事と、その頃の門人としての状況を示す落款が見られます。初期には豊国と同居していたという記録もあります。

彼の作品は多岐に渡り、役者絵、美人画、風俗画の他、合巻や読本といった書籍の挿絵、団扇絵、そして肉筆画にもその才能を遺憾なく発揮しました。多彩な画風と高い技術で知られ、特に合巻の挿絵においては、その時代を反映した情景描写と人物表現で高い評価を得ています。

国安は、歌川豊国門下において歌川国丸、歌川国直と共に「三羽烏」と呼ばれ、その中でも第一人者と目されていました。文政11年（1828年）に建立された豊国先生瘞筆之碑には、国安を含め多くの門人の名前が刻まれています。これらの門弟育成にも国安は貢献したと考えられます。

主な作品

国安の作品は、多様なジャンルに広がっています。代表的な作品として、以下のものがあります。

版本挿絵：
『五人揃紋日大寄』（合巻、益亭三友作、文化8年）
『小柳縞阿娜帯止』（合巻、喜多川雪麿作、文政5年）
『躾方浮世諺』（合巻、薫作、文政7年）
『傾城水滸伝』（合巻、曲亭馬琴作、文政8年-天保4年。第二編から第十二編を担当）
『春小袖門松模様』（合巻、山東京山作、文政8年）
『会席料理世界も吉原』（合巻、三舛（七代目市川團十郎）作、文政8年）
『絵本魁草紙』（読本、洒落斎三馬作、文政8年）
『浜真砂築地白浪』（合巻、三舛作、文政9年）
『面白妙須磨雪平』（合巻、東里山人作、文政10年）
『四十八手最手鑑』（相撲本、烏亭作、文政11年）
『喜怒哀楽堪忍袋』（合巻、小三馬作、文政12年）
『三国妖狐殺生石』（合巻、五柳亭徳升作、文政13年）
『漢楚賽擬選軍談』（合巻、曲亭馬琴作、文政14年）
『新編金瓶梅』（合巻、曲亭馬琴作、文政14年-弘化4年）
『風俗金魚伝』（合巻、馬琴作、文政12年-天保3年）

錦絵：
「九十郎・関三十郎　玉屋新兵衛・尾上菊五郎　奥女中飛鳥・瀬川菊之丞」（大判3枚続、東京都立図書館所蔵）
「尾上菊五郎の四谷怪談お岩」（大判錦絵3枚続）
「通俗水滸伝豪傑百八人之一個　見立入雲龍公孫勝」（大判錦絵、東京国立博物館所蔵）
「駱駝之図」（2枚続）
「箱根温泉遊覧之図」（大判錦絵3枚続）
「日本橋魚市繁栄図」（大判錦絵3枚続）
「相州江ノ島弁天巌屋祭礼之図」（大判錦絵3枚続）
「浮絵亀戸天満宮之図」（横大判錦絵）
「更衣」（大判錦絵）

肉筆画：
* 「立ち美人」（絹本着色、光記念館所蔵）

これらの作品は、当時の社会情勢や風俗を反映しており、歴史的にも貴重な資料となっています。享年39歳という短い生涯でしたが、歌川国安は多くの傑作を残し、江戸時代の浮世絵界に大きな足跡を残しました。

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